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【他科への手紙】精神科→産婦人科

No.4864 (2017年07月15日発行) P.49

古郡規雄 (弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座准教授)

登録日: 2017-07-14

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  • 日頃、産婦人科の先生方には大変お世話になっております。当科通院中の患者で妊娠や更年期障害が疑われ、ご紹介したケースではお手を煩わせております。逆に、周産期の妊産婦には精神不調をきたす例がよくみられると思います。本稿では、この点に関する最近のメンタルヘルスの考え方をご紹介いたします。

    これまで妊産婦の精神不調は、マタニティ・ブルーズや産褥精神病という言葉で理解されてきました。わが国における最近の調査で、産褥期女性の15~35%がマタニティ・ブルーズを、10~15%がうつ病を経験することがわかりました。マタニティ・ブルーズは自然軽快するため治療は不要ですが、産褥期うつ病に発展する方もいます。未治療のまま放置すると重症化・長期化しやすい上、子どもにも悪影響を与えるのでとても心配です。このような場合は、早めに当科へご紹介下さい。

    また、産褥期だけでなく、実は妊娠初期からうつ病を発病している妊婦が少なくないこともわかってきました。周産期の気分障害は、母親自身の家庭や社会生活に機能障害を与えるのみならず、新生児に対するボンディング障害や不適切な育児行動につながり、乳幼児に短期的および長期的な情緒・神経発達的影響を及ぼす可能性が高いと考えられています。これらの被虐待児が成人になってからのパーソナリティ形成にも影響を及ぼし、後にうつ病を発病することもわかってきており、負の循環が形成されています。子どものためにも早めの対処が必要です。

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