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胎児水腫[私の治療]

No.5280 (2025年07月05日発行) P.45

岡田愛子 (大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室)

遠藤誠之 (大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生命育成看護科学講座教授)

登録日: 2025-07-07

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  • 胎児水腫とは,胎児に心囊水,胸水,腹水,皮下浮腫,囊胞性ヒグローマ,羊水過多,胎盤の肥厚のいずれか2つを認める状態で,免疫性胎児水腫と非免疫性胎児水腫に大別される。現在は90%以上が非免疫性であると推定され,原因は多岐にわたる。いずれにおいても胎児が重篤な状態に陥っていると考えられるため,妊娠週数に応じた迅速な対応が求められる。

    ▶診断のポイント

    母体の血液型検査,間接クームス試験を行い血液型不適合妊娠について評価するとともに,主に経腹超音波検査を用いて胎児の状態について評価する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まず胎児水腫が免疫性か非免疫性かの鑑別を行うために,血液型不適合の有無について母体の血液型検査や間接クームス試験,またパートナーの血液型検査を行う。そして,胎児形態や胎児水腫の程度について詳細に超音波検査を行う。さらに,ドップラー超音波検査で中大脳動脈(MCA)の収縮期最高血流速度(PSV)を測定し,胎児貧血の有無について評価する。

    免疫性胎児水腫について,Rh(D)血液型不適合はRh免疫グロブリン投与によって予防することが可能であるが,妊娠初期の子宮内操作でも母体はD抗原への感作リスクを有するため,詳細な問診を行う。また,非Rh(D)血液型不適合については,輸血によって不規則抗体が生じることが多いため,妊娠歴だけでなく輸血歴についても問診を行う。不規則抗体を認めれば,抗体価を評価する。胎児や新生児に溶血性疾患を引き起こす抗体のうち,抗c,抗E,抗Kell抗体は,重篤な疾患を引き起こす原因として重要である。

    非免疫性胎児水腫の原因は多岐にわたり,大部分は特発性とされている。特定可能な鑑別疾患として,胎児奇形(心臓,胸部,消化管,神経,尿生殖器,血管,骨格),胎盤・臍帯異常,胎児血液疾患,新生物・代謝性疾患,胎児染色体異常や先天感染症(TORCH症候群:梅毒,サイトメガロウイルス,パルボウイルスB19,トキソプラズマ,単純ヘルペスウイルス,風疹ウイルスなどにより引き起こされる胎児の障害)を念頭に,超音波検査や血液検査を実施する。また,両親の既往歴や家族歴,妊婦の生活環境などについて問診を行う。胎児染色体異常を疑う場合には,羊水染色体検査を行うことの目的や検査時期について,産科医,新生児科医などを含む医療者らで十分検討した上で,両親にカウンセリングを行い,慎重に実施の可否を検討する。

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