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『肥満症診療ガイドライン 2016』のポイント【従来わかれていた「診断」と「治療」が統合。肥満症と高度肥満症を区別して示した】

No.4860 (2017年06月17日発行) P.52

海老原 健 (自治医科大学内科学講座内分泌代謝学准教授)

登録日: 2017-06-13

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日本肥満学会では,2000年に「新しい肥満の判定と肥満症の診断基準」を発表し,世界で初めて「肥満症」という疾患単位を提唱した。肥満症を診断する重要性は,減量により医学的メリットのある者を選別し,積極的に治療,管理を行うことにある。このコンセプトに基づき,06年には「肥満症治療ガイドライン 2006」を,11年には「肥満症診断基準 2011」を発表している。『肥満症診療ガイドライン 2016』1)は従来の肥満症のコンセプトを踏襲し,診断と治療を統合した内容となっている。

診断における従来との違いとしては,BMI 25~35の肥満症とBMI 35以上の高度肥満症を区別した点が挙げられる。高度肥満症では睡眠時呼吸障害や心不全,肥満関連腎臓病,運動器疾患,静脈血栓症,皮膚疾患などが生じやすく,また精神的問題を伴っていることも多く,肥満症とは異なる個別の治療,管理が必要であることが記されている。

治療における従来との違いとしては,減量目標が肥満症では現体重の3%,高度肥満症では5~10%になったことが挙げられる。従来,肥満症での減量目標は3~6カ月間で5%とされていた。新しい目標値設定の根拠として,08年に開始された特定健康診査・特定保健指導の成績が示されている。この成績では1~3%の減量でコレステロールや中性脂肪,HbA1c,肝機能の有意な改善が認められ,3~5%の減量で血圧,尿酸,空腹時血糖の有意な改善が認められている。

【文献】

1) 日本肥満学会, 編:肥満症診療ガイドライン2016. ライフサイエンス出版, 2016.

【解説】

海老原 健 自治医科大学内科学講座内分泌代謝学 准教授

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