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便利なもの、それは [エッセイ]

No.4845 (2017年03月04日発行) P.72

由富章子 (由富内科眼科医院(熊本県玉名市))

登録日: 2017-03-05

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  • これ、もうちょっとどうにかならないかなぁ、と思うことはありませんか。使いづらくてストレスが溜まる、効率が悪い、だから「もっと、もっと良いものを」と追求することで文化は発展していくのです。極論すれば、モノなくして文化は語れない!?

    人間は道具を考案する動物。道具を使うだけならほかの動物でも可能でしょうが、道具から道具を生み出し、改善を重ねる動物はおそらく人間だけでしょう。そういえば社会科では石器時代、青銅器時代、鉄器時代と移り変わったと習いました。日本の歴史でも、製作された土器の違いによって縄文時代、弥生時代と分けています。モノで歴史を語るのは考古学だけかもしれませんが、どんな時代であっても人間はモノに関心があって、「これ、どうにかならないかなぁ」と常に考えているのです(わたしだって空になった菓子箱を捨てきれず、何かに使えないかなぁと思案しています)。

    その結果……もらい物のボールペンにエコバッグ、紙袋など、見渡すと周辺はモノだらけ。原始人だった頃は、石だけで鏃、斧、包丁となんでもつくり出していたのに、今はすべてが異なる素材に違う用途を振り分けるのですから、モノが溢れるはずですね。その分だけ便利になったかというと、どうも怪しい。便利グッズと銘打ってある割には使い勝手がイマイチで、残念に思うこともしばしばです。

    そこで私は考えました。便利とは何か、どんなものであれば便利なのか、と。

    モノの密度が高い場所の代表が台所。スプーンにフォーク、しょうゆ皿にカレー皿、丼、ワイングラスにマグカップ。食器棚も満杯で、これらがすべてひとつで済むのだったらどんなにすっきりすることか。これがもし、もとは1つの金属で、スプーンになれ! と念じるとスプーンになり、フォークといえばフォーク。なんでも念じたものに変化する、変幻自在に姿を変えてくれる、そんなグッズがあれば助かるのに、と夢想するのは私だけではない? はず。

    ワープロを使わなくても、音声入力しなくても、頭に浮かべるだけで文字を、それも誤変換しないで書いてくれる機械があれば事務作業は大幅に短縮されるでしょう。「どこでもドア」は欲しいけれど、旅をする楽しみは失いたくないので、これはお預け。マンガやSFの世界が実現されたら、と思うと、楽しくなりますね(わたしには発明する才能がないので、誰かさん、頑張ってください)。

    自動運転をしてくれる車、これは近々実用化されそうです。1982年、主人公の乗る車が自動で走り、しかも人工知能が面倒なこともすべてやってくれる「ナイトライダー」という米国の番組があったのですが、それが夢でなくなるというのです。普及すれば居眠り事故も無くなるし、駐車場を探す手間も省ける。高齢者や障害を持つ人には朗報となることでしょう。

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