「ワクチン・ギャップ」解消をめざして,定期接種ワクチンの種類は増加しつつある
2014年10月から水痘ワクチンと成人用肺炎球菌ワクチンが定期接種に加わる
接種対象者や接種スケジュールを確認の上,ワクチンの普及に努めたい
ムンプス,B型肝炎,ロタウイルスワクチンについて,定期接種化に向けての検討が継続されている
2013年4月1日,改正予防接種法が施行された。本改正における大きな目的の1つは,海外先進諸国と比較して公的に接種するワクチン(定期接種)が少ないというわが国の現状,いわゆる「ワクチン・ギャップ」の問題を解消することであった。
本改正により,定期接種のA類疾病にインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b:Hib)感染症,小児の肺炎球菌感染症,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)感染症が追加された。HPVワクチンについては定期接種導入直後に国内で安全性についての懸念事項に関する議論が湧き上がり,いまだ普及には程遠い状況である。一方,Hib感染症と小児の肺炎球菌感染症については,結合型ワクチンの小児への接種普及に伴い,細菌性髄膜炎をはじめとするこれらの菌による小児の侵襲性感染症(invasive infection)の発症報告が大幅に減少し,既にワクチンによる素晴らしい疾病予防効果が認められている。
改正された予防接種法では,予防接種の総合的な推進を図るための計画策定が謳われ,予防接種施策の立案にあたって評価・検討組織への付議が定められ,厚生科学審議会に新しく設置された予防接種・ワクチン分科会で議論が重ねられてきた。その過程で,水痘と成人(高齢者)用肺炎球菌ワクチンは2014年10月からの定期接種が決定され,ムンプス,B型肝炎,ロタウイルスワクチンは今後の定期接種化に向けて検討が継続されている。
2013年4月以降,予防接種・ワクチン分科会および予防接種基本方針部会において,現行では任意接種の各種ワクチンについて,定期接種化を念頭に置いた接種対象者や接種方法などに関する技術的な検討が行われてきた。その結果,水痘,成人用肺炎球菌の2ワクチンについては,おおむね技術的な課題の整理が完了した。定期接種ワクチン追加のためには必要となる財源の捻出も必要であるが,地方財政措置に関して調整が図られた。
これらの経過を経て,水痘,成人用肺炎球菌の2ワクチンの定期接種化が決定した。水痘は主に集団予防を図ることが目的であるA類疾病,成人用肺炎球菌は個人予防目的に比重のあるB類疾病に位置づけられた。定期接種化の実施時期については,ワクチンの供給状況,自治体の準備期間,国民への周知期間などを勘案して,2ワクチンとも2014年10月からとなった。
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