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(4)アセスメントシートとチーム員会議で早期支援へ─石巻市網地島 [特集:地域が模索する認知症の初期支援]

No.4749 (2015年05月02日発行) P.20

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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捕鯨が盛んな宮城県牡鹿半島にある鮎川港の南西約5kmに浮かぶ網地島(あじしま)は、島全体で認知症支援に取り組んでいる。
現在、島の住民数398人(2014年12月現在)のうち65歳以上の高齢者は283人、75歳以上は185人で高齢化率は約70%。2011年に発生した東日本大震災では、死者行方不明者はなかったものの、認知症の周辺症状(BPSD)が悪化する患者が急増した。こうした状況の中、厚生労働省科研費による東日本大震災の健康状態調査で牡鹿地区の調査に参加した東京都健康長寿医療センター研究所の粟田主一研究部長が、石巻市役所牡鹿総合支所の高島良保健師から網地島の認知症支援の必要性について相談を受け、アドバイザーとなって取り組みがスタートした。

多職種会議でチーム力をアップ

取り組みの中心となるのは、1999年に開院した「網小医院」。これまでも網小医院では外来や往診、訪問看護に加え、デイサービスや介護老人保健施設、高齢者生活福祉センターを併設、支援を行ってきたが、認知症疑い患者の診断や病態評価、BPSDへの対応については十分とはいえない状況だった。そこで粟田氏は同院で、看護師や保健師、地域包括支援センター職員などが参加する多職種によるチーム員会議の開催を提案。月1回、個別事例について検討し、情報共有や認知症への理解を深めるための仕組みを整備した。
その上で、認知症が疑われる高齢者の認知機能や生活機能、BPSDなどを総合的に評価するための約20項目からなるアセスメントシートを作成。その結果に基づき医師が診断を行い、チーム員会議で実施プランを作成、支援を実施するという流れ(図2)ができた。診断は画像転送システムにより本院の専門医や粟田氏が判読する。網小医院の谷中紳多郎副施設長は網地島の取り組みについて、「住民の地縁が強く、疑い事例の情報が集まりやすい土壌だったことも大きい。アセスメントシートで早期診断がしやすくなり、個別症状に合わせた治療や介護サービスが提供できるようになりました」と分析する。
高島氏は「網地島の取り組みを石巻市の他の地区でどう展開するかが次の課題」と語る。網地島ではコンパクトな離島ゆえに取り組みの効果が表れている面もあるが、他の地域においても網地島のように行政や医療機関に加え、住民を含めた地域全体で支援する仕組みを構築することが重要といえるだろう。

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