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国内での急性期の経口抗血栓療法の展望 【抗血小板療法ではDAPTとticagrelor,抗凝固療法ではDOACsに期待】

No.4843 (2017年02月18日発行) P.58

井上 学 (国立循環器病研究センター脳血管内科)

長尾毅彦 (日本医科大学多摩永山病院脳神経内科部長)

登録日: 2017-02-15

最終更新日: 2017-02-14

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  • 急性期の非経口的抗血栓療法は遺伝子組み換え組織プラスミノーゲン活性化因子(recombinant tissue plasminogen activator:rt-PA)と血栓回収術の登場をもって盛んに治療が進んでいるかに見えますが,最近の経口抗血栓療法に関しては何か新しい知見が得られているのでしょうか。国内での急性期の経口抗血栓療法について今後の展望を教えて頂きたく,専門家である日本医科大学多摩永山病院・長尾毅彦先生にご教示頂きたく存じます。

    【質問者】

    井上 学 国立循環器病研究センター脳血管内科


    【回答】

    脳梗塞急性期の経口抗血栓療法に関する質問について,抗血小板療法と抗凝固療法にわけて説明します。

    (1)抗血小板薬2剤併用療法
    抗血小板療法については抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)が急性期の非心原性脳梗塞に有効であるという約5000例の報告(CHANCE研究)が中国から2013年に発表され,話題になりました。クロピドグレル硫酸塩とアスピリンの3週間併用が,アスピリン単剤よりも脳梗塞再発が少なかったという報告でしたが,対象が一過性脳虚血発作と軽症脳梗塞症例だけで,加えてわが国の感覚からするとDAPT群でも再発率がかなり高いので,広く非心原性脳梗塞全体で有効なのかはまだ断言できません。またサブ解析で,東アジア人に多い遺伝的にクロピドグレル硫酸塩の活性型への代謝が遅い人では,DAPTの効果が認められなかったとの報告があり,発症直後にこの体質が迅速解析できるかということも今後の課題です。ほぼ同様のプロトコールで,DA PTの期間が3カ月と長いPOINT試験が北南米を中心に進行中ですので,両者の統合解析の結果にも注目しています。

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