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介護老人保健施設での看取りを増やすために心がけていること 【「看取り教育」を実施し,「看取りのガイドライン」を参考にして対応】

No.4839 (2017年01月21日発行) P.58

関本雅子 (関本クリニック院長)

瀬藤晃一 (介護老人保健施設・すばる六甲施設長)

登録日: 2017-01-19

最終更新日: 2017-01-17

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  • 2025年問題をふまえて,高齢者福祉施設での看取りに関しては在宅医が関わることが可能ですが,介護老人保健施設(以下,「老健」)に関して,在宅医は関わることができません。厚生労働省の施策として,介護老人保健施設での看取り率を上げるということも聞いていますが,看取りを一切行わない老健があることも事実です。
    そこで,実際に看取りをしている施設で「看取りを増やすために心がけていること」をご教示下さい。老健すばる六甲・瀬藤晃一先生にお願いします。

    【質問者】

    関本雅子 関本クリニック院長


    【回答】

    (1)老健の設立経緯と社会の変化
    介護老人保健施設(老健)は当初,高齢者の自立を支援し,家庭復帰をめざす中間施設として設立されました。

    そのために施設では看護・介護のようなケア・サービスやセラピストによるリハビリテーション,さらには食事の提供や入浴などの日常サービスが提供されて,もっぱら入所者は比較的短期間で家庭復帰をめざしていました。当時の職員が看取りには不適当な施設と考えても不思議ではありません。しかし,設立後に職員の考え方がしだいにルーズになって入所期間が長くなっていったのも,自然の成り行きだったのかもしれません。

    その頃から日本の人口構造は著しく変化し,高齢化社会から高齢社会,さらには超高齢社会と変貌しました。高齢者が急激に増えるにしたがって,それまで主に病院で看取りが行われてきたのが,病院の機能分化や病床の削減によって,看取りの場所の確保さえ難しい事態が予想されるに至り,厚生労働省は在宅や居住施設での看取りを考えざるをえない事態が起こっています。また,日本経済の低迷から2015年の介護報酬はマイナス改定となりました。いったん延長していた老健の入所期間は本来のあり方に立ち返るべく短縮化が図られ,強化型・加算型の報酬が採用されて差別化が進行しています。看取りに関しても老健では退所後の生活を含め,人生の終末期まで切れ目のない支援計画を多職種共同で策定することが求められ,地域包括ケアの構築に向けて看取り期の充実のために本人や家族の意向,その人らしさの尊重,意思疎通の確認などが重要と考えられています。

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