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新規バイオマーカーの開発とIgA腎症診断への臨床応用 【Gd-IgA1など複数の病因分子をバイオマーカーとし,臨床データと組み合わせることにより高確率での鑑別が可能に】

No.4839 (2017年01月21日発行) P.57

武井 卓 (東京都健康長寿医療センター腎臓内科部長)

鈴木祐介 (順天堂大学医学部腎臓内科教授)

登録日: 2017-01-18

最終更新日: 2017-01-17

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  • IgA腎症の確定診断には腎生検が必要であり,重症度も組織障害に相関することが多いため,重要な検査ですが,侵襲的な検査であるため病状によっては施行できない症例もあります。推定により治療を行うべきか躊躇することがありますが,昨今,新規バイオマーカーが開発されて,このような状況を打開できるのではないかと期待されています。腎生検せずに診断できる可能性の程度,臨床応用の方法について,順天堂大学・鈴木祐介先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    武井 卓 東京都健康長寿医療センター腎臓内科部長


    【回答】

    (1)異常IgA分子をバイオマーカーとして 臨床応用
    IgA腎症は,世界で最も多い原発性糸球体腎炎です。予後不良で,2015年にわが国では指定難病のひとつになりました。最初の報告から50年が経ちますが,いまだ病因は不明です。しかし近年,IgA腎症患者のIgA分子の異常,特にIgA1分子のヒンジ部のガラクトースによる糖鎖修飾が減少・消失(galactose-deficient IgA1:Gd-IgA1)していることがわかりました。さらに,Gd-IgA1を認識する自己抗体(anti-glycan IgG/IgA)も増加し,それによる免疫複合体(Gd-IgA1-IC)形成も病態に関わることも判明しました。

    患者血清中ではGd-IgA1,anti-glycan IgG/Ig A,Gd-IgA1-ICが上昇し,その程度がIgA腎症の腎予後や疾患活動性と相関することがわかりました。腎糸球体に沈着するIgAの大部分が血清由来のGd-IgA1であることも明らかになり,これら病因に基づく分子をバイオマーカーとして診断・スクリーニングに用いる臨床応用が始まりました。

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