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老化・寿命のこと [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.52

堀尾嘉幸 (札幌医科大学医学部長・医学研究科科長)

登録日: 2017-01-02

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人の寿命に関する研究がNature誌に出ていました(Dongら、2016)。統計学を使うと寿命限界は115歳ほど、125歳を超えることはないという結果です。

体が老化するときには、細胞も老化します。老化した細胞を老化細胞と呼び、老化細胞は分裂できないというほかに、分泌顆粒をたくさん持つという特徴があります。この顆粒の中には老化関連β-ガラクトシダーゼという酵素がたくさん含まれているため、この酵素の活性染色をすると老化細胞を検出することができます。

そのような方法で老人の体を調べると、若い人に比べて老化細胞が多く存在することがわかりました。さらに、老化細胞がたくさん持つ分泌顆粒の中身には、周囲に炎症や老化など災いをもたらすとんでもないものも含まれているようです。

老化細胞を取り除けば若さが維持できるのか?薬を使って分裂が止まった老化細胞だけを選択的に殺すことができるマウスがつくられました(Backerら、2016)。このマウスで老化細胞だけを抹殺すると、ネズミの寿命は伸びたのだそうです。

老化細胞が放出する老化物質は血液中にも漏れ出るはずです。150年も昔から老ネズミと若ネズミの皮膚を切開して、お互いの体を縫い付けたままにするパラビオーシスという実験、ネズミにとってはとんでもない実験が行われてきました。この実験を行うと、老ネズミは若々しく、若ネズミはじじくさくなってしまいます。老ネズミには老化を促す物質、逆に、若ネズミには若さを保ったり促したりする物質があることをこの実験は示唆してくれます。

実際、いくつかの分子がその原因だという研究論文が出されていますが、強い反論もあります。ヒトではパラビオーシスができないですが、その代わりに若い人の血清成分を老人に投与するという臨床研究まで企画実行されているそうです。

今年はどんな老化の研究が出てくるか楽しみです。摂食制限は酵母や線虫から哺乳類まで寿命を延ばします。「食べないで我慢する」ことなく健康寿命を伸ばす方法をどなたか編み出してくれないでしょうか?

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