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輝ける人生の支援 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.31

杉山 徹 (岩手医科大学附属病院病院長・産婦人科主任教授)

登録日: 2017-01-01

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四国と同じ県土を有する岩手県、北上高地と奥羽山脈が走る中、道路網、公共交通機関は未熟のままで、盛岡など内陸部と沿岸地区の生活環境はまったく異なります。この時期、自然溢れる岩手県、特に内陸部の盛岡市は寒い!私は福岡県から赴任していますので、骨身に沁みますが、年々温暖化を感じます。昨秋は初めて台風が岩手県に上陸し、大きな爪痕を残しています。大震災と同じように復興には累々とした時間がかかると危惧しています。岩泉・久慈地区の医療、特に周産期医療は崩壊の危機です。

全国都道府県で唯一、官公立大学はなく、私立大学である岩手医科大学が広域な岩手県医療の多くをカバーしています。さらに、私学ですので行政との壁があり、研修医制度の中、20以上の県立病院に医師派遣を行うという厳しい医局・教室運営が各講座には強いられています。たとえば、私は産婦人科医ですが、中央が考えているような周産期医療体制は未来永劫に困難で、現状で効率的と思っていた体制も、いかに脆弱なものか先の台風で再実感しています。打つ手は……? 専門医制度が立ち止まっていることは歓迎です。じっくり医師の偏在まで見越した真の専門医制度にして頂ければと新年早々に願います。

そんな人材が不足している中、我々は医療安全に軸足をおいて、標準治療から高難度医療への最大限の努力をしています。同時に岩手医科大学附属病院は建学の精神「誠の人間の育成」に基づき、患者もチーム医療の一員として医療者と情報を共有できるように努めております。人生、皆と楽しい時を過ごすように、人生の一部である病気とも向き合わねばなりません。家族も患者会などの支援者も、我々医療者も。社会はそれを抱擁できねばなりません。同時に医療費高騰につながっている医学の進歩を患者差別につなげることは論外です。

医療は確実に進歩しています。我々医療人は医療人としての品格を持って、病気には科学、人生には人間としてのサポートができるようにさらに努力せねばと思います。忙しい外来の中で時間を取れないことは我々医療者にもストレスです。「がんサロン」「相談支援室」では求めがある患者さん方とゆっくりお話しできる環境も整え、多くの患者さん方にご利用頂いています。

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