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関東・東北豪雨、水害被災後の病院再建を振り返って [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.116

廣井 信 (医療法人寛正会水海道さくら病院理事長)

登録日: 2017-01-04

最終更新日: 2016-12-26

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平成27年9月10日、関東・東北大豪雨による鬼怒川決壊で当院は壊滅的な被害を受けた。1.5mの床上浸水により1階のCT室、血管造影室、内視鏡室、X線透視室、中央検査室、別棟30床の透析センター、地下1階の厨房が全壊し、病院機能は停止した。入院患者90名、職員40名、他9名の計139名が院内に孤立した。

職員は不眠不休で患者さんをお守りした。自家発電の灯りの下、医師、看護師は転送先医療機関への診療情報提供書、看護サマリーを作成し、薬剤部は納入業者に点滴、内服薬をボートで搬入するよう依頼した。この緊急事態にもかかわらず、職員は通常と変わらぬ転院業務を成し遂げようと黙々と取り組み、すべての患者さんに診療情報提供書、看護サマリー、退院処方をお付けして救助を待ったのである。看護助手さんは救出前の患者さんの清拭を行い、身嗜みを整えて送り出した。全員の救出が完了したのは浸水から48時間後、9月12日の夕刻であった。

9月14日、直ちに各部門長をメンバーとする復旧対策会議を設置した。各部門より問題点を列挙してもらい、KJ法により類似問題点をグループ化し復旧計画を策定した。スローガンとして「奇跡の復興」を掲げ、スピード重視の作業工程表を作成した。

9月15日、復旧作業1日目、全職員に「奇跡の復興」を提示、雇用の完全維持を宣言し士気を高めた。汚泥の掃き出し作業を行いながらも9月16日には仮設テントで外来診療を開始、対策会議は毎日、朝夕開催し、朝にはその日の作業予定を、夕にはその日の進捗状況を確認し修正を加えた。ライフラインは被災直後より寸断されたが、SNS、ホームページ、報道機関へのプレスリリースを通じ、被災状況と復旧の進捗に関する情報を継続的に発信した。その結果、9月28日には被災を免れた2階病棟で内科、外科外来を再開し、5床の透析病床も稼働させた。同日、クラウドファンディングによる短期資金調達を開始し、流失した外来備品、診察機器の購入に充てた。

10月1日には全科の外来を再開、同5日には転送先入院患者の受け入れを開始した。12月6日(復旧作業83日目)には病院機能の完全復旧を果たし、復興支援感謝Dayとして内覧会を開催した。

昨年も熊本地震、東北・北海道豪雨と、局地的激甚災害が発生した。阿蘇温泉病院様には当院より看護師、臨床工学士を派遣し、復旧のお手伝いをさせて頂いた。当院の復旧行程に関わる膨大な資料を保管しているので、要時お問い合わせ頂ければ幸いである。

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