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Fabry病の新生児マススクリーニング 【Fabry病は早期発見・早期治療が重要で,新生児マススクリーニングは家系内の者も含めた予後改善に貢献】

No.4790 (2016年02月13日発行) P.53

井上貴仁 (福岡大学小児科講師)

廣瀬伸一 (福岡大学小児科主任教授)

登録日: 2016-02-13

最終更新日: 2016-10-26

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Fabry病(FD:MIM 301500)は,GLA遺伝子変異によりα-ガラクトシダーゼ(GLA)活性が低下し,グロボトリアオシルセラミド(GL-3)などが全身に蓄積するX連鎖劣性遺伝のライソゾーム病である。従来,男児4万人に1人と非常に稀な疾患とされ,緩徐進行性で初期は自覚症状に乏しいためFDと気づかれず,腎不全や心不全など重篤な臓器不全状態で診断される症例もある。
小児期にみられる特徴的な症状として四肢の疼痛があり,運動,発熱,暑い気候で誘発される。しかし,成長痛や心因性と判断され,診断に時間を要する症例もあるため,FDを念頭に診療にあたる必要がある。
FDの治療は酵素補充療法であり,2004年からわが国でも治療可能になった。しかし,症状が進行した症例では十分な効果は期待できず,早期診断・早期治療が重要である。
筆者らはFD新生児マススクリーニングを実施し,7000人に1人(男児3600人に1人)と,従来の報告に比べ高い頻度でFDが存在することを明らかにした(文献1)。FDは治療可能な疾患であり,FD新生児マススクリーニングは早期診断・早期治療に有用な方法である。さらに,新生児マススクリーニングをきっかけに家系内の発症前や診断未確定者への適切な医療介入が可能となり,予後改善に貢献できると考える。FDの啓蒙とFD新生児マススクリーニングの普及が重要である。

【文献】


1) Inoue T, et al:J Hum Genet. 2013;58(8):548-52.

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