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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療の必要性  【メタボリックシンドロームの発生率が高いため,肥満PCOS患者の治療には減量が重要】

No.4788 (2016年01月30日発行) P.59

松崎利也 (徳島大学産科婦人科准教授)

登録日: 2016-01-30

最終更新日: 2016-10-26

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多囊胞性卵巣症候群(PCOS)は,月経異常,卵巣の多囊胞性腫大,アンドロゲン産生過剰,多毛,肥満,インスリン抵抗性などの内分泌・代謝異常が集積する卵巣機能不全である。この疾患に関する初めての報告は,1935年のSteinとLeventhalによる典型例の報告にさかのぼる。診断法の進歩により,今日では女性の約20人に1人がPCOSと診断され,診療上の重要性が増している。
診断では,2007年に日本独自の診断基準が改訂された。その内容は,月経異常,超音波による卵巣の多囊胞所見,内分泌所見(LHの解離性上昇または卵巣性アンドロゲンの上昇),の3項目すべてを満たすもので,2003年の国際基準との整合性を持つ。
治療は,2009年に日本産科婦人科学会により治療指針が作成された。BMI 25以上の肥満者は日本のPCOS患者の25%を占め,病態にインスリン抵抗性が関与しているため,肥満PCOS患者の治療にはまず減量を行う。5~10%の減量が成功すれば,月経異常は70~80%の症例で改善する。減量不成功例や非肥満例では,不妊治療の希望がない場合は,黄体ホルモンの周期的投与により,若年性子宮体癌の発生を予防する。挙児希望がある場合は薬剤や手術により排卵誘発を行うが,インスリン抵抗性改善作用を持つメトホルミンも選択肢に採用された。
さらに,PCOSはインスリン抵抗性を背景としたメタボリックシンドロームの発生率が高く,心血管病変の予防のために長期的な健康指導の必要性が強調されている。

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