乳腺線維腺腫は,思春期以降に発生する良性腫瘍である。乳腺の良性腫瘍として最も高頻度であり,間質成分と上皮成分の両者の増殖を認める。組織学的には管内型,管周囲型,類臓器型,乳腺症型の亜型に分類される。
線維腺腫と鑑別を要する良性腫瘍として葉状腫瘍,過誤腫がある。また,粘液癌も境界明瞭平滑で似通ったエコー画像を呈する場合もあるため注意が必要である。
近年の分子生物学的解析により,線維腺腫は18番,21番染色体異常を伴い,60%にMED12遺伝子の変異を有することが明らかになった。
触診では,境界明瞭で可動性良好な弾性硬の腫瘤である。
マンモグラフィでは,境界明瞭な楕円形~分葉状腫瘤で,陳旧性線維腺腫はポップコーン様石灰化を伴うことがある。
エコーでは,境界明瞭平滑なやや低~等エコー腫瘤であり,内部均一である。後方エコーは不変~増強,高齢で硝子化・石灰化を伴うと後方エコーは減弱する。また,しばしば側方陰影を伴う。高齢者で粗大石灰化を伴い後方エコーが消失した場合は容易に診断できる。
乳癌との鑑別は,浸潤による所見(境界不明瞭,前方境界線断裂やhalo)を有しない点である。
葉状腫瘍は,葉状構造(スリット)が明らかであれば鑑別可能だが,分子生物学的にも管内型線維腺腫と共通するMED12の変異がみられ,形態学的にも似通った像を呈する場合も多い。針生検,細胞診では鑑別困難で,最終的に摘出標本で葉状腫瘍か線維腺腫かの確定診断がつく。
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