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反復着床障害・習慣流産とビタミンD 【ビタミンDは妊娠における生殖免疫機構に関与しているのか】

No.4786 (2016年01月16日発行) P.52

黒田恵司 (順天堂大学産婦人科准教授)

登録日: 2016-01-16

最終更新日: 2016-10-26

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妊娠は受精卵が子宮に着床し,成立する。着床や妊娠維持には男性由来の遺伝子を含む受精卵を受容する免疫機構を獲得する必要がある。妊娠における免疫機構は主にヘルパーT細胞から産生されるサイトカインが担い,細胞性免疫を誘導するTh1細胞と液性免疫を誘導するTh2細胞に分類され,これらを制御性T細胞がコントロールしている。正常妊娠では胎児・胎盤を攻撃するTh1細胞は減少し,Th2細胞が優位となる(文献1)。
最近,提供卵子での体外受精において,貯蔵型ビタミンDである25-OHビタミンD(25OHD)が欠乏した不妊患者での着床率が低いことが報告(文献2)された。また,ビタミンD欠乏は流産を繰り返す習慣流産とも関与していることも明らかとなった(文献3)。さらに,卵巣機能とも密接に関わっていることから,妊娠にとって重要なビタミンであることは明らかである。
骨形成と関わることで知られているビタミンDは25OHDが体内で活性型の1,25-OHビタミンD(1,25OHD)へ返還され,制御性T細胞を統制し,妊娠におけるTh1/Th2細胞のバランスを調整していることが予想される。原因不明と考えられてきた着床障害や習慣流産の治療に,ビタミンDが現在注目されている。

【文献】


1) Ng SC, et al:Am J Reprod Immunol. 2002;48(2):77-86.
2) Fabris A, et al:Fertil Steril. 2014;102(6):1608-12.
3) Ota K, et al:Hum Reprod. 2014;29(2):208-19.

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