アルツハイマー病(AD)の診断には頭部MRI画像が有用であるが,特に近年,松田らが開発したVSRADが汎用されている。これは統計解析的手法を用いて,ADに特徴的にみられる内側側頭部(海馬,扁桃,嗅内野の大部分)の萎縮の程度を数値指標化(Zスコア)するものである。Zスコアを用いたROC解析では,ADと健常者を91.6%識別可能であると報告されている。
ADの診断に加え,レビー小体型認知症(DLB)の診断ツールとしても活用するために,VSRAD advance 2がリリースされた。DLBのMRI画像所見は,ADと比較して内側側頭部の萎縮が弱く,中脳背側部・橋背側部(背側脳幹)の萎縮が強い(文献1~3)。この特徴を利用して,内側側頭部と背側脳幹のVOI(volume of interest)間萎縮比が新たな参考指標として追加された。この指標が高値を示した場合は,内側側頭部の萎縮と比較して背側脳幹の萎縮が強く,DLBを疑うべき所見となる。ただし,内側側頭部の萎縮が軽度な健常者例でもこの指標は高くなることから,認知機能障害がある症例に限定して評価する必要がある。したがって,最終的には臨床症状と併せて診断しなければならない。
DLBは転倒や誤嚥性肺炎など,ADと比較して予後不良となるイベントが発生しやすい。そのため,これら画像診断法を活用して早期に診断し,治療を開始することが重要である。
1) Kantarci K, et al:Neurology. 2012;79(6):553-60.
2) Whitwell JL, et al:Brain. 2007;130(Pt 3):708-19.
3) Nakatsuka T, et al:Neuroradiology. 2013;55(5):559-66.