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急性肺血栓塞栓症に対する血栓溶解療法の適応

No.4775 (2015年10月31日発行) P.54

土肥由裕 (広島大学循環器内科)

木原康樹 (広島大学循環器内科教授)

登録日: 2015-10-31

最終更新日: 2016-10-26

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急性肺血栓塞栓症に対する血栓溶解療法の適応は,その重症度によって決定される。日本循環器学会のガイドライン(2009)(文献1)では,臨床重症度を4群に分類しており,心肺停止・ショックおよび広汎型に対しては積極的な血栓溶解療法が推奨されている。これに対し,亜広汎型,血圧は安定しているが心エコー上明らかな右室負荷所見を有している症例に対しては,血栓溶解療法の適応はclassⅡbとされている。この亜広汎型に対する血栓溶解療法を検討したのがtPAであるtenecteplaseを用いたPEITHO trialである(文献2)。
PEITHO trialは約1000例の無作為化二重盲検試験であり,7日以内の死亡および循環動態の悪化は有意にtenecteplase群で低値であったが(2.6% vs. 5.6%,P=0.02),脳出血(2.0% vs. 0.2%)および頭蓋外出血(6.3% vs. 1.2%,P<0.001)では有意に高く,その臨床効果は相殺された結果となった(10.9% vs. 11.8%,P=0.63)。
循環動態の悪化に対しては体外循環を用いることで対応可能であり,十分に患者を診ることで遅滞なく導入できる。血栓溶解療法による出血リスクは明らかであり,その適応は十分に検討されるべきであろう。

【文献】


1) 日本循環器学会, 他, 編:肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断, 治療, 予防に関するガイドライン(2009年改訂版).
[http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_andoh_h.pdf]
2) Meyer G, et al:N Engl J Med. 2014;370(15):1402-11.

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