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マタニティ・ヨガの医学的効果とその公衆衛生学的展望

No.4769 (2015年09月19日発行) P.57

川西康之 (旭川医科大学健康科学講座地域保健疫学)

西條泰明 (旭川医科大学健康科学講座地域保健疫学教授)

登録日: 2015-09-19

最終更新日: 2016-10-26

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厚生労働省の『「統合医療」のあり方に関する検討会』が行った報告によると,ヨガは,相補・代替療法のひとつとされている。また妊娠中のヨガは,国内では一般的にマタニティ・ヨガと呼ばれる。
マタニティ・ヨガの現状についての国内の報告は限られている。出生コホート研究である環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」における北海道の参加者を対象に,出産後に行ったアンケートによる追加調査の途中集計によると(文献1),回答者4635名(回答率70.1%)のうち,3281名(70.8%)が「妊娠15週前後までにマタニティ・ヨガについて,やってみたいという気持ちがあった」と回答し,958名(20.7%)が実際に実践していた。以上のように,マタニティ・ヨガに対する妊婦の認識は比較的高い可能性があり,さらに,興味を持ちながらも実践しなかった妊婦が多く認められている。
実際の効果については,ランダム化比較対照試験による海外からの報告によると,精神的症状(不安,抑うつ,ストレスなど),身体的症状(分娩時の疼痛,腰痛),周産期的予後(妊娠高血圧症候群,子宮内胎児発育遅延,分娩時間など)の改善効果が示唆されている(文献2)。
今後さらに,国内でのマタニティ・ヨガの効果が明らかになれば,妊娠中のひとつの選択肢として,妊婦のQOLや周産期的予後の改善などに寄与する,公衆衛生学上の将来的な可能性が期待される。

【文献】


1) 川西康之:旭川医大研フォーラム. 2014;15:68-9.
2) 川西康之:日公衛誌. 2015;62(5):221-31.

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