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高流量酸素吸入が可能な新しい呼吸管理:nasal high flow

No.4769 (2015年09月19日発行) P.54

吉川裕喜 (大分大学呼吸器・感染症内科)

登録日: 2015-09-19

最終更新日: 2016-10-26

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酸素を30~60L/分の高流量で投与できるnasal high flow(NHF)が,新しい呼吸管理として注目されている。本稿では「ネーザルハイフロー」という言葉を便宜上使用するが,文献によってその名称は異なっており,注意を要する。
高流量を維持するには,鼻腔を刺激しないよう十分な加温と加湿が重要である。従来の低流量(15
L/分以下)では,周囲の空気も吸い込むため酸素濃度を保てなかったが,NHFでは吸気流量を上回ることで高濃度の酸素投与が可能となる。60L/分を超える努力性吸気の場合,酸素濃度が設定値以下となることに留意する必要がある。NHFは呼気をウォッシュアウトしCO2再吸入を防いで解剖学的死腔を減少させる。一定の陽圧がかかるわけではないが,気道内圧の上昇をきたしpositive endexpiratory pressure様効果を有する(文献1)。気管支拡張症患者において高流量酸素吸入が気道の粘膜線毛機能を改善したと報告(文献2)されている。患者にとって食事や会話を妨げない,閉塞感からの解放などのQOLの向上は非常に大きな利点である。
NHFの適応としては肺炎,COPD増悪,気管挿管の抜管後,気管支鏡検査施行時の酸素吸入,睡眠時無呼吸症候群などが報告(文献3)されている。一方,顔面損傷などで鼻カニュラを使用できない状態では適応がなく,Ⅱ型呼吸不全を呈している場合の人工呼吸器の代用にはなりえない。
NHFの研究は少なく,効果や適応は十分検証されていない。研究成果の蓄積や発展が期待される。

【文献】


1) Parke RL, et al:Respir Care. 2011;56(8):1151-5.
2) Hasani A, et al:Chron Respir Dis. 2008;5(2):81-6.
3) Nishimura M:J Intensive Care. 2015;3(1):15.

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