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【私の一本】『プロヴァンス物語/マルセルの夏・マルセルのお城』

No.4756 (2015年06月20日発行) P.79

若林俊彦 (名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-17

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  • 1990年製作のフランス映画。イヴ・ロベール監督作品。日本公開は1991年。フランスの小説家マルセル・パニョルの回想録『少年時代の思い出』を原作とした2部作。音楽はウラディミール・コスマ。
    〔マルセルスペシャルエディション(DVD)、パンド、2003年発売〕

    心が寂しくなったときに豊かな愛を満たす名作

    病に倒れた人々は、体の健康を失うとともに、心までもが急速に萎える。その折れかかった心と体で病院に運ばれてきたときに出会った、医療従事者の真に愛情のこもった「温かい一言」は、闇の世界を照らす一筋の光明のように、どれほどその人の心を救い、そして病に立ち向かう勇気を奮い立たせることであろう。

    その人を愛する心の原点を感じさせる映画が、『プロヴァンス物語/マルセルの夏・マルセルのお城』の2部作である。劇場公開されて既に24年が経過しているが、この作品に勝る映画は自分にはない。

    南仏プロヴァンスの自然を背景に、哀愁をおびた美しい旋律の音楽と映像が見事に調和し、美しい青春時代の物語が詩情豊かに描かれる。身近にいる者達と過ごす至福の時間、新たな出会いと、そこで育まれる人間愛の、なんと美しくもはかないものかと、心を揺さぶられずにはいられない。日常業務にまつわる様々な人間模様が織りなす葛藤や意見のすれ違いで、自らの心がぼろぼろに打ちひしがれたとき、この映画を観、音楽に浸る。

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