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抗甲状腺薬の催奇形性

No.4742 (2015年03月14日発行) P.44

浅野麻衣 (京都府立医科大学内分泌・代謝内科)

登録日: 2015-03-14

最終更新日: 2016-10-26

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バセドウ病の薬物治療には主にメルカゾールR(MMI)が用いられるが,以前から,妊娠初期のMMI治療と特殊な先天異常(後鼻孔閉鎖,食道閉鎖および/または気管食道瘻,頭皮欠損,臍腸瘻または尿膜管残存,臍帯ヘルニア)との関連が疑われていた。実際の頻度や因果関係などを明らかにするため,2008年に国立成育医療研究センターが中心となり前向き研究(POEM Study)が開始された。2011年の中間報告では,妊娠初期のMMI服用群ではプロピルチオウラシル(PTU)群・抗甲状腺薬非服用群と比べ臍腸管関連奇形,臍帯ヘルニア,頭皮欠損の発生を高頻度に認めたと公表された(文献1)。また,伊藤病院のretrospective study(文献2)でも,妊娠初期のMMI曝露とMMI関連先天異常の発生には関連があることが示唆された。
これらの結果をふまえ,日本甲状腺学会(文献3)は,現時点では妊娠初期のMMI服用はできるだけ避けるべきで,妊娠中に抗甲状腺薬を開始する際,妊娠初期はPTUを第一選択薬とするが,妊娠中期以降であれば副作用や効果の観点からMMIを第一選択薬とする,という見解を示している(後鼻孔閉鎖・食道閉鎖発生の時期は妊娠7週まで,臍関連奇形発生の時期は9週まで,頭皮欠損発生の時期は15週までと考えられている)。PTUやバセドウ病自体とMMI関連先天異常との関連性や,妊娠判明後どの時点でMMIを中止すべきかという点などについても,引き続き検討が行われている。

【文献】


1) [http://www.ncchd.go.jp/kusuri/news/images/report_2011 111.pdf]
2) Yoshihara A, et al:J Clin Endocrinol Metab. 2012;97(7):2396-403.
3) [http://www.japan thyroid.jp/doctor/infor mation/index.html#ninshin]

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