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皮膚からの食物アレルギーの感作

No.4734 (2015年01月17日発行) P.58

戸倉新樹 (浜松医科大学皮膚科教授)

登録日: 2015-01-17

最終更新日: 2016-10-26

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食物アレルギーは,消化管で感作されて生じると信じられていた。しかし,口腔経由で侵入した抗原が経口免疫寛容(oral tolerance)を誘導することは,免疫学の世界ではよく知られていた。それでは食物アレルギーの感作はどこで起こるのであろうか。食物アレルギーの症状に口腔アレルギー症候群や食物依存性運動誘発アレルギーがある。これらの患者背景にアトピー性皮膚炎があることは周知の事実である。食物アレルギーもアトピー性皮膚炎もアレルギーであるから,両者が合併するのは当然であろうと軽く受け流されていた。
しかし近年,アトピー性皮膚炎患者の角層バリアには障害があり,典型的にはフィラグリン遺伝子変異に基づくフィラグリン欠損があり,蛋白抗原が皮膚を通じて侵入しやすくなっていることが判明した。これに呼応するように,いろいろな皮膚を経由しての蛋白抗原の感作(経皮感作)の事例が明らかとなった。
第一の例がピーナッツアレルギーである(文献1)。乳児や小児でピーナッツオイルを皮膚に塗布したり,環境中にピーナッツバターなどに由来する抗原があれば経皮的に感作され,ピーナッツを食べたときにアレルギー症状が起こる。第二の例は,記憶に新しい加水分解小麦を含む石鹸による小麦アレルギーである。小麦の抗原を含む石鹸を使用することによって,皮膚や鼻腔粘膜あるいは結膜を通じて感作され,小麦食品を食べたときに食物依存性運動誘発アレルギーを起こしたりする。
乳児期にスキンケアをして,こうした抗原が入らないようにすることが予防となる。

【文献】


1) Brown SJ, et al:J Allergy Clin Immunol. 2011; 127(3):661-7.

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