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PSA検診論争

No.4729 (2014年12月13日発行) P.45

原 勲 (和歌山県立医科大学泌尿器科教授)

登録日: 2014-12-13

最終更新日: 2016-10-26

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前立腺癌に対するPSA検診は,日本泌尿器科学会が中心となって対策型検診として推進してきたが,前立腺癌の死亡率減少効果に関しては明らかでなかった。2009年に2つの大規模な無作為化比較対照試験の結果が発表された。
1つはERSPCと呼ばれる臨床試験で,検診群7万2890人,対照群8万9353人を8.8年間追跡した。その結果,検診群の前立腺癌死亡のリスク比は0.80と有意な減少を認めた(文献1)。もう1つはPLCOと呼ばれる臨床試験で,介入群3万8343人,対照群3万8350人を11.5年間追跡した。その結果,前立腺癌死亡リスクは両群で差が認められなかった(文献2)。PLCOでは対照群の約半数が結果的にPSA検査を受けたこと(コンタミネーション)が問題として指摘されている。
日本泌尿器科学会は,PLCOは対照群におけるコンタミネーションの高さから正当な評価は難しいとし,ERSPCの結果を論拠においてPSA検診を推奨している。一方,厚生労働省の班研究は両者が異なった結論となったため,「現在のところ対策型検診として実施することは勧められない」と勧告している。さらに2012年,米国の予防医学作業部会は「小さな利益の可能性でも不利益を上回る価値があると個々に判断しない限りPSA検査を行わないことを勧める」と勧告している。PSA検診に関する論争はいまだ決着したとは言いがたく,今後も検証が必要である。

【文献】


1) Schroder FH, et al:N Engl J Med. 2009;360 (13):1320-8.
2) Andriole GL, et al:N Engl J Med. 2009;360 (13):1310-9.

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