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間質性膀胱炎の下部尿路症状×猪苓湯[漢方スッキリ方程式(102)]

No.5290 (2025年09月13日発行) P.33

武井実根雄 (原三信病院泌尿器科部長)

登録日: 2025-09-10

最終更新日: 2025-09-10

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猪苓湯は『傷寒論』『金匱要略』に出典を持つ方剤で,沢瀉・猪苓・茯苓が余分な水を排出し,阿膠が脱水や出血を防ぎ,滑石が炎症を鎮めるとされる。適応は「尿量減少,小便難,口渇を伴う尿路症状」であり,頻尿,排尿痛,残尿感,血尿,浮腫など泌尿器科領域で遭遇する症状に幅広く対応できる。

間質性膀胱炎は激しい尿意や膀胱痛により頻尿や排尿困難などの下部尿路症状に悩まされる疾患である。本症例では同疾患に対する標準的治療にて効果不良であったが,膀胱刺激症状が問題であったことから猪苓湯を処方し奏効した。

排尿痛が有意に改善,安全に使用できる

泌尿器科の臨床において猪苓湯は最も汎用される漢方薬の一つである。適応症が広く,利尿・抗炎症・結石排石促進など多面的な薬理作用,女性下部尿路症状に対する有効性のエビデンスがある。虚実中間証で処方しやすく体力低下例にも適応でき,標準治療と漢方の橋渡し薬としての位置づけにある。

対象の大部分が間質性膀胱炎症例である探索的臨床研究では,排尿痛スコア(CLSS項目9)が8週時点で有意に改善し(),夜間頻尿も改善を示した1)。副作用は報告されず,安全に使用できる点も利点である。

下部尿路症状に対しよく処方される漢方薬との使い分けの要点をに示した。膀胱痛のような膀胱刺激症状のある下部尿路症状患者に対して猪苓湯は試みる価値があると考える。

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