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歯周病と脳卒中

No.4724 (2014年11月08日発行) P.43

細見直永 (広島大学脳神経内科診療准教授)

松本昌泰 (広島大学脳神経内科教授)

登録日: 2014-11-08

最終更新日: 2016-10-26

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冠動脈疾患などの病因の1つとして感染症が注目されている。現在までにその関連性が示されているものにクラミジア,ピロリ菌などが挙げられるが,歯周病菌もその1つである。歯周病は高血圧,糖尿病,喫煙など心血管疾患の危険因子により,その病状が悪化することが知られている。さらに,アテローム動脈硬化病巣において歯周病菌の存在が示されている。これらの結果から,歯周病菌感染症がアテローム動脈硬化に関与していることが示唆されている。
歯周病と脳卒中との関連に関して,歯周炎による脳卒中の発症,特に非出血性脳卒中の発症への影響が報告されている。脳梗塞患者の病型別における各種歯周病菌の血清中抗体価の検討により,歯周病菌の1つPrevotella intermediaに対する抗体価がアテローム血栓性脳梗塞で高値を示し,この抗体価の上昇と頸動脈のアテローム動脈硬化病変との関連性が示唆された(文献1)。また,異なる歯周病菌Porphyromonas gingivalisに対する抗体価の上昇と心房細動との関連性が示唆され,異なる歯周病菌の影響により,機序の異なる脳梗塞が発症する可能性を示した。
このように,脳梗塞の新たな危険因子として歯周病の関与を解明することで,脳梗塞の発症抑制として新たに歯周病対策を考慮する必要性が示唆されるが,歯周病対策による脳卒中発症予防効果はまだ明らかになっていない。今後,医科─歯科連携による,歯周病対策に基づく脳心血管病対策を考慮する必要がある。

【文献】


1) Hosomi N, et al:Cerebrovasc Dis. 2012;34(5-6): 385-92.

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