株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「NSAIDsの添付文書改訂」稲葉可奈子

No.5250 (2024年12月07日発行) P.55

稲葉可奈子 (産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)

登録日: 2024-11-14

最終更新日: 2024-11-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

先月、低用量アスピリンを除く非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)について、添付文書の妊婦における使用上の注意が改訂され、妊娠後期の使用が禁忌とされる薬剤には、妊娠中期の投与でも胎児の動脈管収縮のリスクがあると追記されました。

これまでは「適宜羊水量を確認するなど慎重に投与すること。シクロオキシゲナーゼ阻害剤を妊婦に使用し、胎児の腎機能障害及び尿量減少、それに伴う羊水過少症が起きたとの報告がある」との記載でしたが、妊娠中期の使用により胎児の動脈管収縮のリスクがあることが追記されたのです。

また、投与時には妊娠週数や投与日数を考慮して、胎児の動脈管収縮の兆候が現れていないかを定期的に確認することが推奨されています。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)がNSAIDsの使用に関する安全性評価を行い、妊娠中期のNSAIDsの使用が胎児に及ぼす影響を調査しました。その結果、妊娠中期の投与でも胎児の動脈管収縮のリスクがあり、さらに、局所的に作用するNSAIDs製剤でも同様のリスクが指摘されました。

当たり前の注意事項をなぜ今さら改訂したのか? と思われる先生もいらっしゃるかもしれませんが、実際に妊娠中期でのNSAIDsの使用による影響が否定できない動脈管閉鎖の報告がみられることと、NSAIDsは多岐にわたり、OTC医薬品もあるため、今回一斉の添付文書改訂の必要があったものと推察します。

外用薬も同様のリスクが指摘されています。妊娠中は腰痛の訴えも多く、湿布薬が必要となることもありますが、処方する際はもちろん、妊婦さんから市販薬についての相談があった場合にもNSAIDsは避けるよう周知のほどよろしくお願い致します。

妊娠中でも使用できる薬は多くありますので、すべての薬を避けるほうがよいというわけではありません。むしろ、合併症のコントロールのために必要な薬で、ベネフィットがリスクを上回る場合は使用したほうがよいのです。妊娠中の投薬についてお困りの際は産婦人科にご相談下さい。妊婦さんご自身が「妊娠と薬情報センター」にお問合せすることもできます。

稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[NSAIDs][妊娠中][動脈管収縮]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top