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皮膚リンパ腫に対する治療の展開

No.4716 (2014年09月13日発行) P.51

戸倉新樹 (浜松医科大学皮膚科教授)

登録日: 2014-09-13

最終更新日: 2016-10-26

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皮膚リンパ腫は菌状息肉症,Sezary症候群を中心とする疾患であり,加えて九州では成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)の患者が多い。菌状息肉症,Sezary症候群の治療オプションは,インターフェロン-γ(IFN-γ)2薬剤が臨床現場から姿を消した後,実質的に後退した。しかし2011年,ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬ボリノスタットが上市された。この薬剤は,多剤化学療法の前に選択されていい治療薬であり,血小板減少,血栓形成,肝障害,腎障害などの副作用に注意しなければならないが,皮膚T細胞リンパ腫に有用である。その使用にあたっては,わが国の患者に応じた投与量を検討しなければならない段階であろう。
加えて最近,以前の2薬剤とは異なるIFN-γ(イムノマックスR-γ)が皮膚T細胞リンパ腫に適用拡大された。さらに欧米では以前より皮膚T細胞リンパ腫に使われているベキサロテンの国内治験も行われている。この薬剤は皮膚T細胞リンパ腫に特に有効なレチノイドであり,エトレチナートで代用していたわが国の現在の状況から脱却できるかもしれない。
ATLLでは抗CCR4抗体(モガムリズマブ)が上市され,すべての臨床型について使用可能となった(文献1)。ATLLは症例の50%に皮膚病変を有する。特にくすぶり型では皮膚科を受診することが多く,予後不良の結節・腫瘤型,紅皮症型,多発丘疹型,紫斑型では良い治療法となろう。これらの治療オプションの増加は,各ステージの治療を全うするためには大きな進歩である。

【文献】


1)Ogura M, et al:J Clin Oncol. 2014;32(11): 1157-63.

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