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酒皶を他疾患と誤診する理由[酒皶診療のパラダイムシフト]

延山嘉眞 (東京慈恵会医科大学皮膚科学講座教授)

登録日: 2025-09-16

最終更新日: 2025-08-29

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※本稿は,延山嘉眞『酒皶診療のパラダイムシフト―適切な診断と治療のために―』の一部を抜粋・編集したものです。

ベテランの皮膚科医でも,時に酒皶を他の疾患と誤診します。

酒皶を有する患者さんは,刺激感や乾燥感を訴えます。時折「敏感肌」だと言います。

皮膚科医は,「症状に合わせた」外用薬の選択が習慣化しています。すなわち,乾燥があれば保湿作用を有する外用薬,刺激感があればステロイド外用薬を処方します。

一方,酒皶の保険適用外用薬では,有害事象として接触皮膚炎,刺激感,乾燥が比較的高頻度に生じます。

刺激感や乾燥感を強く訴える患者さん,あるいは自分を「敏感肌」と固く信じる患者さんを「酒皶」と診断すると,以下の2つの不都合が皮膚科医に生じます(図29)。

  • 疾患の説明が面倒なことになる。
  • 習慣に反する処方を強いられることになる。

これが,刺激感や乾燥感を訴える患者さんに酒皶という診断をくだす際の抵抗感を生みます。この抵抗感のために,患者さんの主訴に一致し,かつ,説明が比較的慣れている「皮脂減少症」や「アトピー性皮膚炎」の診断を支持する都合の良い情報だけを無意識に重視してしまい,結果として誤診すると考えられます。この現象は確証バイアスとして説明できます。

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