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関節リウマチ患者の非結核性抗酸菌感染と生物学的製剤の使用

No.4737 (2015年02月07日発行) P.55

宮崎泰成 (東京医科歯科大学保健管理センター教授)

登録日: 2015-02-07

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

TNF(tumor necrosis factor)阻害薬などの生物学的製剤の投与時,結核感染の検索は必須とされ,陳旧性結核が疑われる場合は,イソニアジド(イスコチンR)などの予防投与後に生物学的製剤の投与が行われています。一方,Mycobacterium avium complex(MAC)などの非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)の感染患者に関して,日本リウマチ学会のガイドラインでは,「非結核性抗酸菌感染症に対しては確実に有効な抗菌薬が存在しないため,同感染患者には原則として投与すべきでないが,患者の全身状態,関節リウマチ(RA)の活動性・重症度,菌種,画像所見,治療反応性,治療継続性等を慎重かつ十分に検討したうえで,TNF阻害薬による利益が危険性を上回ると判断された場合にはTNF阻害薬の開始を考慮してもよい。その場合には一般社団法人日本呼吸器学会呼吸器専門医との併診が望ましい」とされています。そのため,NTMの患者さんに生物学的製剤は非常に使いづらく,RAの治療に難渋することがあります。
実際,NTMの患者さんで生物学的製剤投与が可能なのはどのような場合でしょうか。東京医科歯科大学・宮崎泰成先生のご教示をお願いします。
【質問者】
南木敏宏:帝京大学臨床研究医学講座特任准教授

【A】

「呼吸器症状はなく,胸部X線写真で軽度の変化があり,胸部CTを撮影しNTM症が疑われ,気管支鏡検査でMAC培養陽性が出た」。イメージでは,このような症例がまず治療対象の選択肢に入るのではないかと思います。現時点での治療選択の考え方は以下の通りです。
日本呼吸器学会から2014年2月に出版された「生物学的製剤と呼吸器疾患 診療の手引き」69ページに,この時点でのエビデンスを慎重に考察したRAに合併したNTM症の診断と治療の手引きがclinical questionに答える形で示されています。非常に参考になるので,以下に示します。

2-2.スクリーニング検査で発症が確認された場合は,生物学的製剤の投与は行わず,NTM症に対しては抗菌化学療法を行いその治療に努める(病状により経過観察の選択もありうる)。
2-3.発症の確認されたNTM症を持つRA患者において,RAの活動性の制御のためにどうしても生物学的製剤の投与が必要と判断される場合,以下の条件をすべて満たす場合に限り,投与も考慮されてよい。
・ 菌種:MAC*1 ,X線病型:結節・気管支拡張型*2 ,肺の既存疾患が軽度,全身状態が良好(貧血,低アルブミン血症がない,BMI 18.5 kg/m2 以 上)
・ 抗菌薬の服薬が安定的に継続できており,治療効果が良好
・ 薬剤感受性検査でクラリスロマイシン耐性がない

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