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慢性心不全へのβ遮断薬増量の目標

No.4720 (2014年10月11日発行) P.56

八尾厚史 (東京大学保健・健康推進本部講師)

登録日: 2014-10-11

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

慢性心不全にはβ遮断薬が有効で,特に左室駆出率が低下している症例においてはβ遮断薬の増量により左室駆出率が改善あるいは正常化してくることを経験します。ただし,β遮断薬の目標最大投与量に関しては,まだ一定の見解がないと思います。β遮断薬をどのような症例に,何を目標に,どのくらいまで増量すればよいでしょうか。また,虚血性心不全と非虚血性心不全でβ遮断薬の最大投与量の目標は異なりますか。東京大学・八尾厚史先生のご教示をお願いします。
【質問者】
福本義弘:久留米大学医学部内科学講座 心臓・血管内科部門主任教授

【A】

成因はともかく,β遮断薬が有効である可能性がある症例を一言で述べるならば,種々のストレスにより直接反応性そして二次性に活性化した体液性因子やサイトカインの効果で心室が拡張し,収縮性が低下している症例と言えます。その代表が,遺伝性を含む拡張型心筋症であり,心筋梗塞後を含む広義の虚血性心不全です。基礎医学的考察から,β遮断薬のresponderは心筋細胞内の異常が改善し,心機能改善が得られるとされています。
ここで問題となるのは,β遮断薬をどのくらいの量まで増量して有効性の評価を行うかということです。私の答えは,血圧および脈拍が許す限り,副作用がみられない範囲での最大量をもって行うということです。なぜならば,カルベジロールを例にとると,服用時の血中濃度には各個人できわめて大きなばらつきがあり,同じ量を服用しても人によっては100倍ほど血中濃度に違いが生じるからです。
一方,同じ血中濃度だからといって,その効果は同じでしょうか。受容体の感受性のみならず,細胞内シグナリング経路への効果にも個人差があることは明白で,やはりそれがわからずして投与量が適当かどうかはわからないはずです。生命予後に関わることであり,十分でない治療や評価は危険と言わざるをえません。したがって,基本的な考え方は副作用が生じない範囲での最大投与量をめざすということです。それでは,実臨床でどうやって投与量を決めているのか,ご説明したいと思います。
房室ブロックや洞不全症候群など禁忌事項がなく,患者さんの了解が得られた場合,β遮断薬の使用を考慮します。そして,使用前と使用中の自宅血圧,脈拍,体重を記録してもらうのが大前提になります。カルベジロールを例にした外来で導入する場合の最も慎重な投与計画は,2週間ごとの来院として,0.625mg 1回から開始し,1.25mg 2回,1.875mg 2回,2.5mg 2回,3.75mg 2回と,前回の朝の投与量に夜を合わせ,次に朝の投与量を倍にするという作業を繰り返します。脈拍数が明らかに低下する時点が効果判定の第一ポイントです。
このとき,低血圧が進行する場合は注意が必要で,non-responderの可能性があり,自宅血圧のほか,BNP(brain natriuretic peptide)やX線所見など,少し慎重に経過を追ってから増量を考慮します。一方,血圧が上昇してくる例はほぼ間違いなくresponderで,20mgくらいまでは増量してエコーやMRIでの拡張および収縮性の改善を確認します。20mgまで増量しても脈拍数減少が十分得られない場合(脈拍数>70),血圧も低下してこなければ40mgくらいまでは増量を計画します。20mgを超えて使用する場合は,保険適用の問題があるため,患者さんのインフォームドコンセントをとることを忘れないようにします。
最後に,虚血か非虚血かでのβ遮断薬使用量の違いですが,あくまで心室筋が回復するのがβ遮断薬の効果で,残存心筋細胞数が少ない場合は効果の得られ方が少ない。そういった観点からは,最大使用量における差はありませんが,両疾患においては,広範な虚血性の心筋脱落や線維化の程度が強い場合は効果に限界があります。

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