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肥大型心筋症診断におけるMaron分類の使用頻度は?

No.4778 (2015年11月21日発行) P.57

筒井裕之 (北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学 教授)

登録日: 2015-11-21

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

肥大型心筋症の病型分類であるMaron分類は,どの程度汎用されていますか。また,原典について教えて下さい。 (兵庫県 K)

【A】

肥大型心筋症のMaron分類とは,Maronらによって1981年に提唱された僧帽弁レベルの短軸断層心エコー図で評価した肥大形態の分類で,以下の4型にわけられます(図1)(文献1)。
Ⅰ型:心室中隔前部に限局する肥厚
Ⅱ型:心室中隔全体の肥厚
Ⅲ型:心室中隔から左室前壁や側壁を含む肥厚
Ⅳ型:心室中隔前部以外の部位の肥厚
この分類の原典(文献1) は,肥大型心筋症の診断において最も重要なMモード心エコー図所見であった非対称性中隔肥厚(asymmetric septal hypertrophy:ASH,心室中隔壁厚/左室後壁厚比が1.3以上)に当てはまらない肥大様式が存在し,その診断には断層心エコー図が有用であることを示した論文です(文献1)。
その後,肥大型心筋症の特徴的な肥大様式は,圧負荷などで説明のつかない,不均一で,非対称性の心筋肥大であり,肥大の部位は心室中隔のみならず,左室後壁や左室前壁,側壁,右室にも局在することが明らかとなりました。さらに,対称性壁肥厚も稀ではないこと,Maron分類に含まれない特殊型として,心室中隔および左室壁の壁厚が乳頭筋レベル付近から心尖部にかけて急激に増大する心尖部肥大型心筋症も存在することがわかりました。このように,肥大型心筋症における心肥大にはASHを呈さない種々の形態が存在することから,「非均等型左室壁肥厚(asymmetric left ventricular hypertrophy)」と表現するのが妥当と考えられています(文献2)。
近年では,肥大型心筋症の診断においてMRIが有用であることも認められています。MRIは,造影剤を用いずに明確に心筋と心腔を分離でき,任意の断面設定が可能です。また,心エコー図法よりも広範な部位での心筋壁厚を正確に計測することができます。心エコー図法で描出が困難なことの多い心尖部肥大型心筋症や,側壁に肥大が限局した心筋症の正確な評価において,力を発揮します(文献3)。画像診断の進歩とともに,Maron分類自体は臨床の現場で使用されることはほとんどなくなりましたが,肥大型心筋症の非均等型肥大が多様な様式をとることを,30年以上も前に丁寧な観察に基づき見出した意義は大きいと思います。

【文献】


1) Maron BJ, et al:Am J Cardiol. 1981;48(3):418-28.
2) 日本循環器学会, 他:肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版).
[http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_doi_h.pdf]
3) Rickers C, et al:Circulation. 2005;112(6):855-61.

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