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副作用として徐脈が見られる場合のβ遮断薬服用中止の見きわめ

No.4762 (2015年08月01日発行) P.67

篠原徹二 (大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学 講座)

登録日: 2015-08-01

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

降圧薬としてβ遮断薬を用いると,副作用として徐脈が現れることがあります。服用中止の見きわめをご教示下さい。 (東京都 F)

【A】

従来,β遮断薬は高血圧治療の第一選択薬として重要な役割を果たしてきました。しかし,近年の大規模臨床試験において,β遮断薬は糖尿病惹起作用を有し(文献1),臓器障害・心血管病抑制効果がほかの薬剤に劣る(文献2)とのエビデンスが示されるようになりました。このことをふまえて,『高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)』(文献3)では,高血圧に対する第一選択薬は,Ca拮抗薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensinⅡ receptor blocker:ARB),アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)阻害薬,利尿薬の4種類となり,従来第一選択薬の1つに位置づけられていたβ遮断薬は,主として心疾患合併高血圧に対して選択すべき薬剤とされ,第一選択薬からは除外されることになりました。
しかし,高血圧症の患者を治療する目的は,降圧のみとは限りません。頻脈性心房細動による動悸や息切れがQOLを低下させ心不全を誘発する場合,安定労作性狭心症があり冠動脈インターベンションが行えない場合などにβ遮断薬は大変有用な薬剤です。つまり,高血圧に加えて心不全,頻脈,狭心症の合併や,心筋梗塞後などがあれば,β遮断薬は積極的に使用すべき薬剤であることには変わりありません。
このようなことから,β遮断薬の服用中止の見きわめはβ遮断薬服用の必要性に応じて個々の症例ごとに判断する必要があります。心不全,頻脈,狭心症の合併や,心筋梗塞後などの患者に対してβ遮断薬が使用されている場合は,徐脈に伴う眩暈や眼前暗黒感などの自覚症状が出現した際には減量もしくは中止すべきです。
時に,どことなくだるくて元気がない,ぼやっとするなどのとらえどころのない訴えとして出現するかもしれません。一方,純粋に降圧薬としてのみ使用されている場合は,たとえ自覚症状がなくとも安静時心拍数が50回/分を下回るようであれば,服用を中止してほかの降圧薬に変更したほうがよいでしょう。
また,β遮断薬を使用開始する際には,慎重さが求められます。少量から導入し,副作用を見落とさないようにします。特に糖尿病,異型狭心症,気管支喘息,徐脈が疑われるときは十分な注意が必要です。
JSH2014においてβ遮断薬の降圧薬としての役割が変わったことから,積極的適応(心不全,頻脈,狭心症の合併や,心筋梗塞後など)がない場合には,特に副作用を生じさせないように留意してβ遮断薬を使用することが求められます。

【文献】


1) Elliott WJ, et al:Lancet. 2007;369(9557):201-7.
2) Opie LH:J Hypertens. 2008;26(2):161-3.
3) 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会,編:高血圧治療ガイドライン2014. ライフサイエンス出版, 2014, p45-57.

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