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免疫不全患者に対して禁忌とされるワクチンの種類とステロイドがワクチン接種に与える影響

No.4761 (2015年07月25日発行) P.64

野々山恵章 (防衛医科大学校小児科)

登録日: 2015-07-25

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

免疫不全患者で禁忌になっているワクチンとそうでないワクチンがありますが,その理由は何ですか。
またステロイド内服はワクチン接種に影響しますか。 (福岡県 I)

【A】

免疫不全症には細胞性免疫(T細胞)が低下している場合と,液性免疫(B細胞)のみが低下している場合があります。
前者では,ウイルスなどを細胞性免疫で排除することができないため,生ワクチン(MR,水痘,ムンプス,ロタ,経口生ポリオ,BCG)は禁忌です。ワクチン株が持続感染し,変異を起こして毒性を持つこともありえます。不活化ワクチンは,接種してもかまいません。生体内で増殖するわけではないからです。しかし,特異抗体を産生するためにはT細胞とB細胞の相互作用が必要であるため,抗体の上昇が得られるかどうかは病型によって異なります。重症の細胞性免疫不全がある場合は接種しても効果はありません。
後者では,生ワクチン,不活化ワクチンともに接種してもよいでしょう。細胞性免疫が正常であるため,ワクチン株のウイルスは排除されるからです。しかし,治療のためにγグロブリン定期補充をしている場合は,生ワクチンが補充されたγグロブリンに含まれるウイルス中和抗体により中和されるため,効果が期待できません。不活化ワクチンは残存した液性免疫が反応して,自分由来の特異抗体を産生する可能性もあるので,病型に応じて接種してもよいでしょう。Hib,PCV13,日本脳炎,DPT-IPV,DT,IPV,不活化インフルエンザ,HPV,B型肝炎,A型肝炎ワクチンなどがそれにあたります。
先天性好中球減少症では,生ワクチン,不活化ワクチンともに接種してよいでしょう。
慢性肉芽腫症ではBCGは禁忌です。BCG菌はマクロファージなどの細胞内に寄生する菌ですが,慢性肉芽腫症はこうした細胞内寄生菌を殺菌する過酸化酸素を産生できない疾患であり,BCG菌が持続感染してしまい,肉芽腫,BCG骨髄炎,BCGリンパ節炎などを起こしうるからです。
なお,BCGは,結核菌に対するヘルパーT細胞を誘導し,マクロファージを活性化して結核菌をマクロファージ内で殺菌することがワクチンの仕組みであるため,γグロブリンを投与していても接種してかまいません。なお,γグロブリン投与後については,ほかのワクチンが中和されて効果がなくならないように,非経口生ワクチンはγグロブリン投与後3カ月程度は空けて接種します。
ステロイド投与は,主に細胞性免疫を低下させます。したがって,ステロイド投与患者には生ワクチンによる播種・持続感染の可能性があるため,生ワクチンは接種しません。具体的には,MRワクチンは,プレドニゾロン2mg/kg以上を連日または隔日で14日以上服用している場合は,接種を中止します。一般にステロイド服用中止後1カ月の間隔を空けてからの接種を勧めます。
水痘ワクチンは,プレドニゾロン1mg/kg/日以下では安全に接種でき,抗体獲得ができる場合もあるとされています。ただし,寛解期に接種することが原則です。また2mg/kg/日以上投与されているときは接種してはいけません。
もしこうした患者が,水痘ワクチン未接種ないし未罹患であって,水痘患者と接触した場合は,水痘が重症化する危険があるため,直ちに水痘ウイルス中和抗体を含んだγグロブリンを投与して,水痘の感染の成立を阻止します。静注用γグロブリンを100mg/kg/日程度で投与します。
BCGは生菌であり,全身播種してしまう可能性があるため,ステロイド投与中は接種禁止です。プレドニゾロンで2mg/kg以上か,20mg/日を超える量を2週間以上投与した場合は,中止後6カ月程度してから接種します。
なお,細胞性免疫が落ちていると,ヘルパーT細胞によるB細胞の抗体産生補助機能が低下するため,抗体産生自体も低下する可能性があります。

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