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ベンゾジアゼピン系薬長期投与による副作用

No.4757 (2015年06月27日発行) P.63

三島和夫 (国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神生理研究部部長)

登録日: 2015-06-27

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

若年女性の本態性振戦に対してブロマゼパムが奏効するとのことで前医処方を継続しています。咳喘息がありβ-ブロッカーの投与を控えていますが,若年者に対して10年単位でベンゾジアゼピン系薬(BZD)を投与することに懸念があります。長期投与した場合の今後の見通し,留意すべき副作用があればご教示下さい。
(神奈川県 O)

【A】

日本神経治療学会が作成した本態性振戦の標準的神経治療指針によれば,ストレス対策などの生活指導では対処が難しく,ADLへの影響が無視できない中等度以上の症例に対して薬物療法を行うことになっています。第一選択薬としてプロプラノロールやアロチノロール(β-ブロッカー),プリミドン(抗てんかん薬)があります。本例のようにβ-ブロッカーが使いづらい場合でも,β-ブロッカーと同等の有効性が確認されているプリミドンが選択肢として残ります。後述する理由から質問者が候補に挙げているブロマゼパムの前にプリミドンの適否を検討することをお勧めします。
これら第一選択薬の効果が不十分な場合や副作用が強い場合に,第二選択薬であるBZD,ガバペンチン,トピラマート(抗てんかん薬)を検討します。
BZDとしてはブロマゼパムのほかに,クロナゼパム,アルプラゾラムなどがあります。しかし,BZDには身体依存形成(耐性による増量,減薬・休薬時の離脱症状),認知機能障害,持ち越し効果,ふらつきや転倒などの副作用があり,特に長期服用時にリスクが増大します。若年者に年単位,10年単位で長期処方をすることのリスク・ベネフィット比を慎重に勘案する必要があるでしょう。ガバペンチンやトピラマートにも当然ながら副作用は存在し,決して服用しやすい薬剤ではありませんが,患者の体調や薬剤忍容性も加味しながらBZDの優位性を検討すべきです。
BZDの副作用の中でも身体依存,特に離脱症状は頻度の高さや症状の重篤度から留意が必要です。DSM-Ⅳにおける「鎮静薬,睡眠薬または抗不安薬離脱(292.0)」の診断基準では,離脱症候として自律神経系過活動,手指振戦の増加,不眠,嘔気または嘔吐,一過性の幻視,体感幻覚,または聴覚性の幻覚,または錯覚,精神運動興奮,不安,痙攣大発作などが挙げられています。BZD服用者の20%以上で離脱症状が生じ,特に半年以上の長期服用時には40%前後まで増加します。一部の患者では,常用量を服用しているにもかかわらず休薬時に離脱症状が生じることもあります(常用量依存)。
BZDは過去50年以上にわたって抗不安薬,睡眠薬として用いられてきた馴染みのある薬剤ではありますが,一部の患者においては深刻な副作用を惹起する可能性があることを絶えず念頭に置くべきです。特に,若年症例に対してBZDを長期処方することの是非は,慎重に判断するべきでしょう。

【参考】

▼ 日本神経治療学会:ガイドライン・標準的神経治療:本態性振戦.
[https://www.jsnt.gr.jp/guideline/hontai.html]
▼ 三島和夫:睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン. じほう, 2014.

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