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HBs抗体陽性の透析患者から医療従事者への感染の可能性

No.4748 (2015年04月25日発行) P.63

四柳 宏 (東京大学医学部附属病院感染症内科科長)

登録日: 2015-04-25

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

HBs抗原(-),HBs抗体(+),HBc抗体(+)の透析中の入院患者がいますが,担当看護師はHBs抗体(-)でB型肝炎ワクチンを何度接種しても抗体がプラスになりません。このケースで針刺し事故が起こったとき,看護師が感染する可能性はありますか。また,事故直後に抗HBsグロブリンを注射すれば感染を回避できますか。
感染対策として,今後の入院患者については,従来のHBs抗原,HBs抗体に加えて,HBc抗体も測定すべきでしょうか。また,HBs抗体が陽性にならない看護師は,上記のような患者の透析穿刺業務からは外れてもらったほうがよいでしょうか。 (福岡県 O)

【A】

血液維持透析中の患者におけるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症に関するご質問です。HBs抗原陰性,HBs抗体・HBc抗体陽性であり,“感染治癒後”と判断されますが,このような状態でも血液中に感染力のあるHBV-DNAが存在することがしばしばあります。したがって,患者のHBV-DNAを高感度のreal time PCR法を用いて測定することがまず必要です。HBV-DNAが陰性であれば,針刺しなどの曝露で感染することは考えなくてよいと思われます。
問題はHBV-DNA陽性の場合です。HBs抗原陰性の透析患者における血清HBV-DNA陽性率は0.11%と,きわめて低率であることが最近報告されていますが(文献1),低率であっても存在することに注意すべきです。一般にHBV-DNA量は4log copies/mLレベルと低く,曝露による感染リスクは高くありません。
HBs抗体陰性の看護師に関しては,患者のHBV-DNA量が多くなければ,血液曝露の直後にHBIG(ヘブスブリンR )を投与することで感染は防御可能です。同時に標準予防策を遵守することが求められます。

【文献】


1) Katayama K, et al:Hepatol Res. 2015 Jan 19. doi:10. 1111/hepr. 12492. [Epub ahead of print]

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