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自己免疫性リンパ増殖症候群の診断と治療・予後

No.4746 (2015年04月11日発行) P.60

高木正稔 (東京医科歯科大学小児科発生発達病態学分野講師)

登録日: 2015-04-11

最終更新日: 2016-12-13

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【Q】

自己免疫性リンパ増殖症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome:ALPS)の診断と治療,予後についてご教示下さい。 (東京都 F)

【A】

(1)診断
ALPSは慢性のリンパ節腫脹,脾腫などを特徴とし,自己免疫疾患を合併する症候群です。自己免疫機序に基づく多系統の血球減少がみられることが多くあります。特徴的な症状・所見を表1に示します。これらの症状・所見からALPSを疑い,検索を進めますが,一般的に保険収載されている検査のみでは,確定診断は困難です。そのため,血清中の可溶性Fasリガンド(sFasL),IL-10の上昇,末梢血中のTCRα/β陽性,CD3陽性,C
D4/CD8二重陰性リンパ球(double negative T:DNT)の増加などにより診断を行います。
またALPSと類似の症状,検査所見を示すRAS関連自己免疫性リンパ増殖症候群様疾患(RAS-associated autoimmune leukoproliferative disorder:RALD)などのALPS類縁疾患もあります。このようなケースでは,DNT細胞の上昇は必ずしもみられるわけではありません。このような検査所見を示す例において,Fas依存のアポトーシス障害の検索,遺伝診断を行うことにより,確定診断を行います。
(2)治療
自己免疫症状にはステロイドの有効性が示されています。プレドニゾロン1~2mg/kgの投与が行われ,無反応例にはメチルプレドニゾロンのパルス療法が行われることもあります。
難治例に対して,欧米ではミコフェノール酸モフェチル(MMF),シロリムスなどの投与が行われています。そのほか,リツキシマブや脾摘なども治療の選択肢となりえますが,効果は確定的ではなく,慎重に適応を検討する必要があります。
血液の異常が主体となる疾患であるため造血幹細胞移植が根本的な治療法となることが考えられ,またその報告もあります。しかしながら,一般的に予後良好な疾患であり,その適応は慎重に判断する必要があります。
ALPS類縁疾患に関しては症例数も少なく明確な治療指針はありませんが,Fas経路の異常によるALPSに準じて治療を行うことになると考えます。
(3)予後
Fas経路の異常によるALPSでは加齢とともに症状が軽快することが知られています。一番大きな問題は,悪性腫瘍の合併であり,10%の発生頻度との報告があります。ホジキンリンパ腫,バーキットリンパ腫,非ホジキンリンパ腫など様々なタイプがみられ,予後に影響を与えます。

【文献】


1) Rao VK, et al:Blood. 2011;118(22):5741-51.

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