株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ジアゼパムの熱性痙攣再発予防の適応

No.4720 (2014年10月11日発行) P.61

唐木克二 (静岡県立こども病院小児救急センター医長)

大澤真木子 (東京女子医科大学小児科名誉教授)

登録日: 2014-10-11

最終更新日: 2016-12-12

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

ジアゼパム(ダイアップR)坐薬の熱性痙攣の発作時および予防の適応について。特に予防のための投与については,通常の単純型熱性痙攣に投与されている例をよくみるが,これは過剰な投与と言えるのではないか。 (佐賀県 S)

【A】

熱性痙攣は,生後7カ月から5歳の間に好発し,通常38℃以上の発熱を伴って生ずる発作性疾患であり,中枢神経感染症,代謝異常,そのほか明らかな発作の原因疾患のないものを言う。患児の過半数は生涯を通じて1回しか発作を起こさない。わが国の熱性痙攣患児の再発率は45%前後で,その中の半数以上は1回のみの再発であり,5回以上の再発は6~8%,10回以上は1~3%である(文献1)。
熱性痙攣の再発予防を目的としたジアゼパムの応急投与は,未治療群と比べて有効であることが示されており(文献2),わが国では主にジアゼパム(ダイアップ)坐薬が使用されている。使用法としては,0.4~0.5mg/kg/回を37.5℃を超す発熱時に速やかに投与し,初回投与後8時間経過後もなお発熱が持続するときは同量を追加し,2回投与で終了とするのが一般的である。副作用としては一過性の軽度のふらつき,興奮,嗜眠などがみられるが,呼吸抑制などの重大なものは稀である。
ジアゼパム坐薬の適応については,添付文書情報には,単純型か否かでの記載は存在せず,わが国では,第一線の臨床医向けに作成された「熱性けいれんの指導ガイドライン」(文献3)に基づいて使用されることが多い。
熱性痙攣頓挫後に救急外来を受診した患児に対してジアゼパム坐薬を使用することについては,ガイドライン上では言及していないものの,熱性痙攣を起こした有熱期間中の再発を減少させるという報告がある(文献4)。
再発予防を目的とした投与に関しては,ガイドラインでは臨床経過と要注意因子(表1)により方針決定を行うとされ,自然放置が望ましい場合,発熱時ジアゼパム応急投与が望ましい場合,抗痙攣薬連日持続内服療法が望ましい場合について言及している(表2)。基本的にはこの記載に沿うのがよく,初回単純型熱性痙攣の再発予防の意義は乏しいと考えられる。
以上を前提とし,再発予防によるメリット,デメリットの両面への配慮と,保護者の意見を十分に考慮した上で方針を決定するべきであると考えられる。
なお,乳児期早期に発症し,発熱誘発性(入浴というわずかな体温の上昇でも)の痙攣重積(しばしば半身痙攣であり,同一個体では左右交代性に起こる)という特徴がある場合は,Dravet症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)の可能性が高く,1歳頃にはミオクロニー発作などほかのかたちの発作が出現するが,この場合にはジアゼパム坐薬は無効である。予防接種に伴う発熱でも重積を起こすので注意が必要であり,専門家への紹介が望まれる。


【文献】


1) 須貝研司:小児科. 2013;54(5):485-91.
2) Offringa M, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2012;4:CD003031.
3) 福山幸夫, 他 :小児臨. 1996;49(2):207-15.
4) Hirabayashi Y, et al :Brain Dev. 2009;31(6): 414-8.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top