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飲酒による脈拍上昇の機序と不整脈患者への治療・指導

No.4700 (2014年05月24日発行) P.63

河野雄平 (国立循環器病研究センター高血圧・腎臓科部長)

登録日: 2014-05-24

最終更新日: 2016-12-12

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【Q】

72歳の大酒家(焼酎3合/日)。最近,翌日の脈拍が140/分と高く,不整もある。飲酒による脈拍上昇の機序と治療法を。 (福岡県 T)

【A】

アルコールの心血管系への作用は単純ではないが,飲酒後に脈拍は増加する。筆者らの高血圧患者における検討でも,アルコール単回摂取後に心拍数は増加し,一方血圧は低下した(図1)(文献1)。飲酒後の脈拍上昇の機序は,主に交感神経系の活動亢進によると考えられる。筆者らの検討では,飲酒後には血漿カテコールアミンが上昇し,飲酒後の心拍数増加はβ遮断薬により減弱した(文献2,3)。この心拍数増加と血圧低下は,飲酒後に顔面紅潮を呈する者で著しく,そうでない者では軽度であり,アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドの血管拡張作用と反射性の交感神経活性化が関係している(文献4,5)。
アルコールの慢性摂取時には,飲酒後の数時間だけでなく,24時間を通して心拍数は増加する(文献5,6)。血圧は2相性に変化し,飲酒後は低下し,翌日の朝と昼には上昇する。慢性飲酒による脈拍上昇の機序については,アルコール摂取およびその離脱に伴う交感神経系の活性化や,心臓の機能的,構造的変化が関与していると考えられる。また,長期間の大量飲酒者が断酒した場合には,翌日をピークとするアルコール離脱症候群を呈する。この場合,神経徴候とともに頻脈と血圧上昇が主要な臨床症状に含まれる。
アルコールが期外収縮や心房細動などの頻脈性不整脈のリスクを高めることは,よく知られている(文献4)(文献5)。アルコールによる不整脈は大量飲酒後に起こりやすく,交感神経活動亢進やそれに伴う血清カリウム低下が機序として考えられる。また,慢性のアルコール摂取による心臓の機能的,器質的障害も関与するであろう。
質問の72歳の大酒家については,翌日の脈拍が140/分で不整もあるとのことで,発作性心房細動をきたしていると思われる。アルコールは少量(日本酒にして1合/日まで)であれば,循環器疾患については好影響が悪影響を上回るが,大量だと悪影響が大きくなる。上記の症例の酒量は焼酎3合/日と多く,循環器,肝臓,消化器,神経系などへの悪影響は明らかで,恐らくアルコール依存の状態であろう。節酒あるいは断酒が強く勧められるが,それが困難な場合にはβ遮断薬が良い適応となろう。また,心房細動の診断が確定した場合には,抗凝固薬の使用も考慮されたい。

【文献】


1)Kawano Y, et al:Hypertension. 1992;20(2):219-26.
2)Kawano Y, et al:J Hum Hypertens. 1996;10(9): 595-9.
3)Kawano Y, et al:Blood Press. 1999;8(1):37-42.
4)河野雄平:循環器病と気になる嗜好品─アルコール,たばこ,コーヒー,茶,ココア,チョコレート─知っておきたい循環器病あれこれ. 循環器病研究振興財団. 2010, p79.
5)Kawano Y:Hypertens Res. 2010;33(3):181-91.
6)Kawano Y, et al:Am J Med. 1998;105(4):307-11.

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