株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

膀胱全摘除術における効率的な尿道の摘除方法【男女別に手術のコツをつかみ,出血を抑えて手術時間を短縮】

No.4797 (2016年04月02日発行) P.58

加藤晴朗 (長野市民病院泌尿器科部長)

登録日: 2016-04-02

最終更新日: 2016-10-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

膀胱全摘除術は大きな手術で,膀胱そのものを剥離・摘出する方法については多くの手術書で解説されていますが,特に男性において,尿道も一塊にして摘除する際の骨盤操作と会陰操作の連携,恥骨裏の操作についての記載を見ることがあまりありません。男性,女性,神経温存,神経非温存などで少しずつ方法が異なると思いますが,出血が少なく効率的な尿道の「抜き方」について,長野市民病院・加藤晴朗先生のご教示をお願いします。
【質問者】
吉村耕治:静岡県立総合病院腎センター長/泌尿器科部長

【A】

膀胱全摘除術における出血の少ない効率的な尿道の抜き方についてのご質問について,以下,男女にわけて述べさせて頂きます。
(1)男性の場合
骨盤側で前立腺側方靱帯,背側静脈群を処置し,膀胱前立腺が尿道だけでつながった状態にしておき,やや頭側に牽引して外括約筋の筋層のみを電気メスで全周性に削ぐようにして,尿道のきれいな面を露出しておきます。次に会陰操作に移ります。開脚位のまま行う術者もいますが,砕石位にしたほうが,はるかに操作が容易になります(女性も同様)。まず,球海綿体筋から球部尿道をきれいに剥離して,背側面正中の隔壁を,尿道を貫かないようにして鉗子を通し,細いネラトンなどで確保し,遠位に向かって剥離し外尿道近くで離断します。
次に,近位側の膜様部尿道に向かい球部尿道をさらに露出していきますが,球部には側方から球動脈が入ってくるので,これを損傷しないようにします。球部尿道を左示指で下方に押しつけるように張力を掛けながら,12時の方向で恥骨下縁から尿道に向かう線維組織を丁寧に切離していくと,鈍的に膜様部尿道とおそらく外括約筋の間の層で骨盤内に指が入り,尿道の上半周に沿って鈍的剥離が可能です。
6時方向については,球部尿道を損傷しないように尿道を上方に牽引してもらい,さらに直腸前壁を下方に押さえながら球部尿道と中心腱から会陰体に連なる組織を鋭的にある程度切離していくと,この部でやはり膜様部尿道の背側に入ります。残りの左右の側方から入る組織の中に球動脈が存在するので,シーリングして切離した後,尿道を全周性に鈍的・鋭的に剥離すると,膀胱前立腺と連続した形で尿道が摘除できます。
ただし,この方法は球部尿道の剥離が直腸に近くなり,球部尿道に切り込みが入ったり,あるいは球動脈を損傷して出血や尿道が途中で引きちぎれる原因になるので,個人的には,球部尿道をある程度剥離したら,先に膜様部尿道を確保し,それ以外の球部海綿体組織をクランプし,切離後,断端に針糸を掛けて結紮止血します。この方法は球動脈をいじらないですむので,出血も少なく時間も短縮できます。
(2)女性の場合
男性と同様に,骨盤内で尿道と腟前壁の間を膀胱から丁寧に剥離後(尿道にがんがない場合),膀胱の後方靱帯から連続して,尿道側方の組織をシーリングして切離し,少ないながら背側静脈群も処理して,骨盤底に尿道だけでつながった状態にします。
腟の断端を閉鎖した後,やはり膀胱尿道を頭側に牽引しつつ,尿道の括約筋を電気メスで少しずつ全周性に削ぐようにしながら,外尿道口付近まで到達します。
ここで会陰側の操作に移行し,外尿道口周囲を全周性に切開して尿道カテーテルおよび外尿道口側の粘膜を牽引しながら尿道周囲に付着する線維組織を切離していくと,尿道が外れて膀胱と一緒に摘出することが可能です。
以上ですが,手術のコツを文章のみで説明するのは困難ですので,詳細は拙著をご参照頂ければと思います。
【参考】
▼ 加藤晴朗:イラストレイテッド泌尿器科手術 図脳で覚える術式とチェックポイント. 医学書院, 2007.
▼ 加藤晴朗:イラストレイテッド泌尿器科手術 第2集 図脳で学ぶ手術の秘訣. 医学書院, 2011.

関連記事・論文

関連書籍

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top