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災害時の感染症への対応

No.4770 (2015年09月26日発行) P.64

高橋謙造 (帝京大学大学院公衆衛生学研究科准教授)

登録日: 2015-09-26

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

東日本大震災から4年が経過しました。この震災によってもたらされた教訓は,これからも国民の間に永く語り継がれなければならないと思われます。災害の際,被災者の健康管理はもちろんのこと,支援者やボランティアの健康管理にも留意する必要があります。特に,感染症がひとたび被災地で流行すれば,普段以上に,早く,数多くの人たちに感染が広がります。東日本大震災時の状況をふまえ,災害時の感染症への対応について,帝京大学・高橋謙造先生のご教示をお願いします。
【質問者】
神田秀幸 島根大学医学部環境保健医学講座教授

【A】

災害時の感染症への対応において留意すべきなのは,感染症の持ち込み・伝播対策です。行政機能,医療施設機能が麻痺している中で感染症対策を進めるには困難がいくつもありますが,2011年3月11日の東日本大震災において,私たちは重要な教訓をいくつか得ました。
あまり知られていないようですが,外国人ジャーナリストが発熱した状態で被災地東北と東京を往復し,結果として麻疹だったことが判明したという事例があります。幸いにして被災地での流行にはつながらなかったものの,外部からの流入人口(ボランティア,メディアなどを含めて)は,常に感染症持ち込みのベクターとなりうることに留意しなければなりません。ボランティア活動などで感染症を拡散してしまう可能性があるからです。
その点で,ケアプロ社(本社:東京都中野区)が行ったボランティア活動は特徴的です。彼らは,ボランティアの健康管理を活動として行いました。ボランティアの方たちは,その義務感から自分の体調を顧みずに頑張りすぎてしまう傾向があるようです。そのような状況を予測し,毎日の体調問診と体温測定というシンプルな手順のみでインフルエンザ様疾患や胃腸炎などの拡散を予防しました。これは,「支援者支援」の好例であると考えます。
また,ニーズに合わせた定期外の予防接種も重要です。特定非営利活動法人Health and Development Serv-ice:HANDS(http://www.hands.or.jp)は岩手県気仙地域において,乳児に対するロタウイルスワクチンの無料接種を行政と連携の上で行い,ロタウイルス腸炎の蔓延を予防しました。親子が集まるイベントを開催し,そこでの接種を推進したようです。活動の詳細は,HANDSの公開報告書に記載されています。
これらの活動は,行政や医師会などとの連携に基づいて行われたときに効果を発揮するのだと考えます。事業は押しつけではなく提案型で,現地の実情を観察,評価,相談の上で行っていくべきでしょう。
ご質問への回答として,これらの成功事例の情報を共有いたします。

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