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抗リウマチ薬使用時のニューモ シスチス肺炎に対する予防内服

No.4767 (2015年09月05日発行) P.58

森 俊輔 (国立病院機構熊本再春荘病院 リウマチ臨床研究センターリウマチ科部長)

登録日: 2015-09-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)では,経過中にニューモシスチス肺炎(Pneu-mocystis pneumonia:PCP)の合併がしばしば認められ,特に生物学的製剤使用中は注意しなければならない疾患のひとつだと思います。RA薬物療法の際のPCP予防には保険が適用されていますが,具体的な投与方法や適応患者,投与期間などに関して明記されたものがありません。どのような患者さんが対象か,また投与薬剤や投与量,投与期間について,国立病院機構熊本再春荘病院・森 俊輔先生のご教示をお願いします。
【質問者】
中下珠緒:亀田総合病院リウマチアレルギー内科部長代理

【A】

PCPの効果的な発症予防法を知るためにはPneumocystis jiroveciiの伝播・感染様式を知る必要があります。以前は,乳幼児期の初感染から潜伏していた菌が,宿主の免疫能の低下に伴い再活性化してPCPが発症すると考えられていました。しかし現在では,新たなP. jirovecii感染によりPCPが発症するというエビデンスが集まってきています。
複数の腎移植施設からPCPの集団感染の報告が相次ぎましたが,当施設においても2006年からの2年間で外来RA患者にPCPの集団発生が起こりました。施設内での患者間接触の可能性の有無とPCR法によるP. jirovecii DNAの検出データを組み合わせた結果,施設内でP. jiroveciiがヒト─ヒト感染した可能性が出てきました。
この伝播経路の中で無症候性キャリアがリザーバーの役目を果たしていました。伝播・感染サイクルを遮断することが予防のポイントになりますが,そのためにはPCP患者の治療と併せて無症候性キャリアからP. jiroveciiを除去することが大変重要です。PCP患者を治療してもキャリアが存在する限り,同じ患者集団から次々にPCPが発症することになるからです。
RA患者では高齢,気道病変の存在,ステロイド投与がP. jiroveciiの無症候性キャリアの危険因子で,これらの患者には予防投薬が推奨されています。ただし,リスクが低い患者でも無症候性キャリアの可能性はあり,そのままにしておけばPCPの発生を抑え込むことはできません。さらに,自分の施設のRA患者からP. jiroveciiを完全に除去しても,新たな患者が受診した場合,この患者が無症候性キャリアでP. jiroveciiを持ち込む可能性があります。
私は,新たに当施設で抗リウマチ薬治療を開始するRA患者にはST合剤による予防投薬を行うようにしています。また,PCP患者が発症した場合は,既に他のRA患者にP. jiroveciiが感染しているかもしれません。この場合,自分の施設のRA患者全員にST合剤による予防投薬をすることも,集団発生を封じ込めるには有効でしょう。投与量については,ST合剤1錠を連日あるいは2錠を週3回投与,ST合剤使用不可の場合はペンタミジンを月1回吸入してもらいます。
では,無症候性キャリアの体内からP. jiroveciiを完全に除去するのにどのくらいの予防投薬期間が必要なのでしょうか。HIV患者では末梢血CD4陽性T細胞数(200/μL以下)を指標にして予防投薬の開始と終了時期を判断していますが,RA患者にはそのような指標はありません。当施設では,PCR法によってどのくらいの期間でP. jiroveciiが消失するかを検討してきました。その結果に基づいて,数年前よりST合剤1錠を5日間投与していますが,これ以後,予防投薬を受けた患者からのPCP発症はありません。
ST合剤の長期投薬は不利益が多いので推奨できません。また,低用量であってもST合剤の有害事象には注意が必要です。当施設では500例ほどに予防投薬を行いましたが,3例に顆粒球減少が観察されました。そのため,当施設では投与開始1週間後に血球検査を実施しています。

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