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糖尿病黄斑浮腫の最新治療

No.4765 (2015年08月22日発行) P.55

沢 美喜 (堺市立総合医療センター眼科(アイセンター) 副センター長)

登録日: 2015-08-22

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

糖尿病黄斑浮腫は,糖尿病網膜症の合併症として網膜にある黄斑という部分が浮腫を起こし,網膜症の初期段階でも視力障害が起こる病気です。黄斑部は視力にきわめて重要な場所であることから,黄斑浮腫が長期間続くと視力が大きく低下し,しばしば回復が困難になります。
この糖尿病黄斑浮腫の最新治療について,堺市立総合医療センター・沢 美喜先生のご教示をお願いします。
【質問者】
黒田暁生:徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター

【A】

糖尿病黄斑浮腫は糖尿病患者において視力障害を生じる最も大きな原因です。糖尿病黄斑浮腫には局所性とびまん性があります。
局所性黄斑浮腫は主に毛細血管瘤からの限局した漏出によって生じ,遷延すると輪状硬性白斑がみられます。局所性の場合には,毛細血管瘤に対する直接レーザー光凝固が治療の第一選択となります。
びまん性黄斑浮腫は拡張した網膜毛細血管から広範囲に漏出を生じるため,レーザー光凝固が困難です。黄斑浮腫の要因には,網膜毛細血管からの透過性亢進だけでなく,眼内の血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)濃度の上昇が関与していることがわかっています。そのため,加齢黄斑変性で用いられている抗VEGF薬が注目され,2014年に糖尿病黄斑浮腫にも適応拡大となりました。現在,糖尿病黄斑浮腫に対して認可されている抗体製剤は,ラニビズマブ(ルセンティスR )とアフリベルセプト(アイリーアR )です。これらの薬剤を眼内に直接投与(硝子体内注射)するため,黄斑部への物理的侵襲が少なく,即効性があり,視力良好な早期から治療が行える利点があります。
両薬剤とも視力が安定するまで毎月投与を繰り返す必要があります。アフリベルセプトは5回連続注射,その後は2カ月ごとの定期投与が推奨されています。しかしながら,いったん黄斑浮腫が消失しても,これらの注射による浮腫の抑制効果は一時的なので,再発は避けられません。一方で薬価が16~18万円と非常に高価なので,患者さんの治療費負担が膨大になることが最大の欠点です。糖尿病網膜症は慢性疾患であり,治療は長期にわたることが予想され,脳梗塞の再発率を高める,血圧上昇などの副作用も報告されていますので,全身状態を把握しながら慎重に投与を行う必要があります。

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