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軽症のビタミンD欠乏性くる病の治療

No.4765 (2015年08月22日発行) P.54

北中幸子 (東京大学医学部附属病院小児科准教授)

登録日: 2015-08-22

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

ビタミンD欠乏性くる病は近年再び増加傾向にあり,注目されています。その中で,軽症のビタミンD欠乏性くる病では,ビタミンD製剤を投与しなくても,食事指導と生活習慣の改善により速やかに軽快する症例をときどき経験します。
一般にビタミンD欠乏性くる病の治療では活性型ビタミンD3製剤を投与することとされていますが,上述のように,比較的軽症例では必ずしも必要ないと思われます。しかし,食事と生活習慣の指導だけで改善する症例がどの程度のくる病症例なのかなどについてはよくわかっていません。この点について,東京大学・北中幸子先生のご見解をお伺いいたします。
【質問者】
望月 弘:埼玉県立小児医療センター代謝内分泌科部長

【A】

ビタミンD欠乏症は,ビタミンD欠乏の程度や,欠乏状態に置かれた期間によって,必要とする治療期間や治療法が様々であることは,ご経験の通りと思います。受診したときは既に回復経過にある例や,昔はひどいO脚と成長障害があったにもかかわらず改善した例など,自然に改善する例もありますし,食事や紫外線の生活指導だけで改善することもあります。
一方,海外ではビタミンD欠乏症の治療に天然のビタミンD製剤が使われており,治療量は,1日2000~5000IU程度と,かなり高用量が推奨されています。生活習慣の改善だけでこの量のビタミンDを摂ることは,非常に大変です。さらに,ビタミンD不足は,免疫やがんなど様々な病態と関連があると言われており,ビタミンD不足状態に置かれることが,その後の疾患発症に影響しないとも言えません。
今までわが国では,乳幼児には治療薬としての活性型ビタミンD3製剤しかありませんでしたが,最近は,天然ビタミンDの乳幼児用サプリメントも入手できるようになりました。生活習慣の改善はもちろん必要ですが,不足している状態が改善するまでは,それとともに,ある程度はビタミンDの補充も必要と考えられます。

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