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国会を「改憲論議」一色に染めてはいけない [お茶の水だより]

No.4813 (2016年07月23日発行) P.12

登録日: 2016-07-23

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▼参院選の翌11日、朝刊各紙一面には「改憲勢力3分の2」の見出しが躍った。憲法改正に前向きな勢力が衆院・参院ともに改憲発議に必要な議席を確保したことで、国会は新たな局面を迎える。
▼参院選では消費税率引上げ延期の影響を踏まえた社会保障政策が争点の1つに挙げられた。しかし、公約や政策集を見渡しても不足する社会保障財源への具体的対応策を打ち出した党派は見当たらなかった。各党とも差別化の難しい“努力目標”の個別項目が並び、与党の追い風となった印象だ。
▼一方、安倍晋三首相は参院選の結果を受け、改憲に向けた動きを加速させたい意向を示している。安倍首相の自民党総裁任期は2018年9月まで。逆算すると今年秋の臨時国会で議論を開始し、17年の通常国会で改憲原案をとりまとめ、秋の臨時国会で憲法改正を発議する必要がある。しかし、前文を含めた全面改正を求める自民党と公明党は方針に隔たりがあり、改憲勢力内の意見集約だけでも大変な労力と時間がかかることは必至だ。
▼18年度には地域包括ケア構築に向けた総仕上げとなる診療報酬・介護報酬同時改定が控える。しかし、社会保障にとって待ったなしの重要な時期に、当初は社会保障が争点の1つとされた選挙によって、結果として改憲論議一色に染まる“改憲国会”を招くという皮肉な可能性も出てきた。
▼例えば17年度税制改正で結論を得るとされている控除対象外消費税問題については、国民の理解を含め時間をかけた丁寧な議論が必要になるため、影響が懸念される。参院選で自民党は改憲を争点化することを避けた。今後の国会では、有権者の民意に沿って社会保障や経済政策を巡る地に足の着いた議論が展開されるべきだろう。

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