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参院選と『日本会議の研究』[お茶の水だより]

No.4812 (2016年07月16日発行) P.16

登録日: 2016-07-16

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▼大方の予想通り与党の圧勝に終わった参院選。日本医師連盟が推薦した自見英子氏は、約21万票を獲得し初当選を果たしたが、日医連が目標に掲げていた25万票には届かなかった。
▼一方、参院選を前に安倍政権へ多大な影響を与える組織として注目を集めたのが、保守系団体「日本会議」だ。閣僚の多くが日本会議のメンバーであり、日本医師会の横倉義武会長も役員に名を連ねる。目指す方向性には「改憲」「靖国参拝」「愛国教育」「自衛隊海外派遣」などを掲げ、医療分野に関してはほとんど主張していない。
▼日本会議を検証した書籍『日本会議の研究』(菅野完著・扶桑社刊)によれば、日本会議を実際に運営するのは「日本青年協議会」。その源流は1970年代の生長の家学生運動の出身者に辿りつくという。菅野氏は、日本会議が抗議集会の開催や地方議会での陳情活動、署名集めといった愚直なロビー活動を長年継続してきたことが現在、政権への影響力につながっていると指摘。医師会の政治力低下にも言及し、「往時の、農協・土建業組合・医師会・各種業界団体などと比べると、今の日本会議は、その規模も小さく、統一性にも欠ける」が、これらの業界団体が力を失ったために日本会議の存在感が相対的に高まった─と分析している。
▼日本医師会の呼び掛けで2004年に発足した、40の医療関係団体で作る「国民医療推進協議会」は、「国民医療を守るための国民運動」として総決起集会の開催や地方議会・議員への働き掛けなどを行ってきた。菅野氏の分析を踏まえると、医療界が再び政治的影響力の拡大を目指すのであれば、一見遠回りに見えても、こうした地道な活動を粘り強く続けていくことが近道なのかもしれない。


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