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患者申出療養の「トリセツ」も上書きを [お茶の水だより]

No.4773 (2015年10月17日発行) P.11

登録日: 2015-10-17

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▼先日出席した知人の披露宴で、新婦の父が新郎宛に「娘の取り扱い説明書」というメッセージを読んだ。「定期的に褒めると機嫌よく働く」だとか。若い女性に人気のミュージシャンによる「トリセツ」という曲も流行っている。世の男性には、多少面倒でも遵守したほうが無難なアドバイスということだろう。
▼「患者申出療養」のトリセツに当たる制度設計が固まった。患者申出療養は保険外併用療養の1つで、患者が希望した国内未承認・適用外の医薬品や医療機器について、臨床研究中核病院や協力医療機関で医療が受けられる。同様に未承認薬などを使用する先進医療Bとの違いは「患者起点」と「迅速化」だ。
▼制度の前身は政府の規制改革会議が昨年提案した「選択療養」。患者と医療機関が合意の上で診療計画を策定すれば混合診療も可能―とする提案だったが、厚労省や医療関係者などの反対により、呼称変更し、保険収載を前提とする現在の形に落ち着いた。
▼今後、患者申出療養として実績のある医療は約400カ所の医療機関で実施可能となる。しかし、選択療養のイメージとして当時の稲田朋美行革担当相が例示した金沢大のカフェイン併用化学療法を用いた治療では後に、臨床研究に関する倫理指針違反が見つかった。同大の調査では、臨床研究実施計画の無断変更や同意書が確認できない患者も存在するなど管理運営の杜撰さが指摘された。患者アクセスは向上するが、安定性を確保する仕組みは十分なのか。
▼詳細な運用方法については国が省令や告示、通知などで示し、来年4月の開始に備える。新婦の父は「説明書は結婚生活を送る中で絶えず上書きしてほしい」と締め括った。患者申出療養の運用もあらゆる事態を想定しつつ、制度実施後の新たな課題の検証を通じ、常に改良を重ねていく必要があるだろう。

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