日本医師会の松本吉郎会長は5月16日の定例会見で、医療機関の経営が「限界まで乾いた布のような状況にあり、いくら絞ったところでもう水は出ない」と危機的状況にあると訴え、次期2026年度診療報酬改定に向けて、医療費のどこかを削って財源を捻出するのではなく、あくまで財源を純粋に上乗せするいわゆる“真水での対応”を強く求めた。
政府・与党で骨太方針2025の策定に向けた議論が進む中、松本会長は会見で主に①経済成長の果実の活用、②高齢化の伸びの範囲内に抑制するという社会保障予算の目安対応の見直し、③賃金・物価の上昇に応じた公定価格等への適切な反映―の3点を日医として政府・与党に改めて働きかける方針を示した。
①では消費税収が2020年度の21兆円から2025年度予算では24.9兆円と3.9兆円増加している一方、それらが社会保障の充実に使われていないことを問題視。経済成長による税収増を社会保障の安定財源として活用する新たな仕組みの構築を求めていく。
②では社会保障予算を高齢化の伸びの範囲内に抑制する目安対応を抜本的に改める必要性を強調。骨太方針2024では目安対応について「経済物価等に配慮しながら」と盛り込まれたものの全く不十分とした上で、骨太方針2025ではさらにそれを強め、財政フレームそのものを見直し別次元の対応とする文言を盛り込むことを求めた。
③のインフレ対応を巡っては「現在の医療機関の経営状況ではこれ以上の賃上げは不可能であり、このままでは人手不足に拍車がかかり、患者への適切な医療を提供できなくなってしまう」と危機感を露わにし、医療介護業界でも他産業並みの賃上げができるよう、賃金・物価の上昇に応じた公定価格への適切な反映を求めていくとした。