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規制改革会議の提案は矛盾していないか [お茶の水だより]

No.4752 (2015年05月23日発行) P.9

登録日: 2015-05-23

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▼政府が進める財政健全化計画では、社会保障分野が歳出改革の柱となる。規制改革会議は6月の答申に「医薬分業」の見直しを盛り込む方針を示している。その中で焦点となるのは「院内薬局」の是非について。現在、病院と薬局を同じ建物・敷地内に併設することは認められていないが、「患者メリットがない」として、規制を緩和すべきとの提案だ。
▼医薬分業の狙いは、大別すると「薬物療法の安全性・有効性の向上」と「保険財政の効率化」。しかし、3月12日に行われた規制改革会議の公開討論では、医薬分業の必要性については多くの委員が理解を示す一方、規制のあり方を疑問視する声が相次いだ。これに対し、厚労省は「薬剤師が処方チェック機能を果たすには医療機関からの独立が必要」と訴えたものの、病院の周囲にはいわゆる門前薬局が乱立しており「説得力に欠ける」と指摘された。
▼今年に入り、複数の大手調剤チェーンが薬歴管理をせずに「薬剤服用歴管理指導料」を算定していたケースが発覚した。大手チェーンには「儲けすぎ」との批判もあり、医薬分業のもたらすデメリットが目立つ。制度の大義は現実を前に虚しく響くばかりだ。経営上の分離が担保されていれば院内薬局を認めるとの提案は、現状を踏まえると妥当だろう。
▼同時に規制改革会議は「かかりつけ薬局」の推進も打ち出す。高齢化の進展で服用中の医薬品や副作用歴などの患者情報を一元的に把握する、かかりつけ薬局の重要性が増すことは言うまでもない。後発医薬品の使用促進や残薬の解消などでもその役割は大きいが、「院内薬局容認」と「かかりつけ薬局推進」が並ぶ提案には疑問符もつく。院内薬局は現在の門前薬局が院内に移っただけのものになることが予想され、患者の身近で健康サポートやアドバイスなどの役割を果たすかかりつけ薬局とはイメージが異なる。
▼もちろん規制改革会議が求める医薬分業の見直しは、院内薬局を認めることだけが目的ではない。「敷地を分ける」=「医薬分業」なのかという問題提起から、医薬分業における薬局の果たすべき役割を問うたものだろう。しかし、規制が緩和されれば、病院には安定したテナント収入が見込まれ、薬局は最高の立地を手に入れることができる。患者にとっても利便性が高いことから、院内薬局の設置は急増すると予想される。本来の狙いではないにせよ、院内薬局容認は結果として、かかりつけ薬局の推進とは逆ベクトルの施策と言えないだろうか。


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