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虐待が疑われる乳児死亡:司法解剖前の検案書の作成[〈今日使える〉死亡診断書・死体検案書の書き方・考え方〜当直・在宅・事故(10)]

No.5286 (2025年08月16日発行) P.34

監修: 久保真一 (福岡大学名誉教授)

執筆: 木下博之 (科学警察研究所所長)

登録日: 2025-08-18

最終更新日: 2025-08-12

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【症例】

10カ月,女児。母親と2人暮らし。本日午後4時頃,自宅で,女児の様子がおかしいことに母親が気づき,病院に搬送された。救急隊到着時(午後4時15分)の意識レベルJCS300,病院到着時(午後4時27分)には心肺停止状態で,蘇生処置が行われたが,まったく反応はなく,死亡が確認された。初診時には,既に死後硬直や死斑が出現しており,開口が困難で気管挿管ができなかった。

担当した医師が母親から話を聞いたところ,「前日まで特に異常はなく,様子がおかしくなって救急隊へ通報する直前まで,ミルクを摂取していた」と話す等,診察時の状態とつじつまの合わない点が多く,虐待が疑われ,警察に届け出た。

身長68cm, 体重6.2kgと,標準的な10カ月女児の発育状態と比べて,体格は小さく,るい瘦が著明である。また,頭部や体のあちこちに,あざのような皮膚変色がみられる。既往歴は特になく,内分泌疾患や骨代謝異常はない。保育園には2週間前から登園しておらず,心配した保育園が自宅に電話したものの,つながらなかったとのことである。

警察による検視の結果,司法解剖を実施することとなった。

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